【6月 大学受験通信】 ~「受験勉強を習慣化させよう」~

はじめに

 6月に入りました。中間考査が終わり、運動部に所属している人は最後の大会を迎えようとしていますね。この6月というのは、運動部に所属してなかなか勉強に目を向けられていなかった人たちも一斉に部活動を引退し、受験勉強へ舵を切ります。

 大学受験という未知の世界への挑戦に対して、多くの不安や迷いがあるなかでのスタートであることは間違いのないことでしょう。「千里の道も一歩より」という言葉があるように、不安や迷いがあることを理由に何も始めないのであれば、目標とする大学の合格へ近づくどころか他の受験生と差をつけられる一方で、目標達成の実現がどんどん難しくなってしまいます。やや、厳しい言葉に感じるかも知れませんが、勉強をしてゆかなければ何も始まらないし、達成も出来ないのです

 本稿では、大きな転換期を迎える高3年生に対して、志望校合格に向け一歩を踏み出すためのヒントとなる考え方や方法を紹介してゆきたいと考えています。また、入学・進級したばかりで、新たにスタートする勉強に対して不安や迷いがあるであろう、高校1年生と2年生の皆さんにも、新たな一歩を踏み出すためのヒントとしてご覧いただけると幸いです。

受験勉強を習慣化させよう

(1) 短期・中期目標を立てる

 高校3年生にもなると、一校に絞ることができていないことはあれども、大体は「このあたりの大学には進学したい」といった希望を持っている人が大半であるかと考えます。こうした目標(到達点)をある程度明確化したうえで、何事もスケジュールは現在から到達点までを逆算して作成してゆくのが、基本的な方法です。この場合は当然入試日(来年の2月)に照準を合わせて計画を作成してゆくわけですが、1年後というあまりにも遠い位置のみを到達点と考えてしまうと、その過程を考えるのは大変難しいものです。ゆえに、長期目標を「第一志望大学合格」としたうえで、短期・中期目標を合わせて考えてゆくこと方法をとることが良いと考えます。

 では、短期・中期目標の立て方について続けてお話ししてゆきます。まずは中期目標からお話ししますが、結論からいうと中期目標は「1学期終了まで・夏休み期間・11月末まで」の2~3カ月スパンの3段階を設けることを推奨します。なぜならば、筆者はこの3段階がそれぞれ受験勉強の大きな節目になるからと考えているためです。まず、1学期は基本的には基礎知識を固める時期に相当すると考えます。英語であれば、英単語と英文法をしっかりとマスターできるようにする、数学であれば少なくとも数学ⅠA・ⅡBの基本レベルの問題が解けるようになっているなど、夏休み以降にしっかりと問題演習をこなしてゆくための基盤が築けていることが重要です。

 そして、夏休みは多くの人が受験勉強に一番の重きを置いて行動できる時期になります。この夏休みは1学期に覚えきらなかった基礎知識を補完することや、暗記のようなインプットの勉強から問題演習といったアウトプットの勉強へシフトしてゆく時期であります。このような勉強内容の転換期であると同時に、夏休みという長期休業期間が終わった時に、どのような状態になっているのかが2学期以降に志望校対策の勉強を進めてゆくにあたって重要になるのです。

 最後に、志望校へ合格するにあたっては11月末までに、どの程度まで知識を習得出来ているのか、そしてどのレベルまでの問題演習をこなせてゆくのかで、12月からの「追込み」の勉強内容が変わってゆきます。やはり、12月からは志望校の個別試験に向けた対策や、共通テストに向けた最後の調整に入りたいものです。ゆえに、11月末までにどこまで受験勉強を仕上げておくことができているのかで、受験の結果は大きく変わってゆくでしょう

 ここまでは、勉強を始めるにあたっての目標設定についてお話してきました。1年間という長い受験勉強も、短期・中期目標を立てることで、「いつまでに自分は何をやらなければならないのか」を細分化されて目前の「すべきこと」を明確にしてゆきましょう。また、中期目標で立てた内容をさらに細分化させ、「今週はこの範囲をノルマとしよう」「今月末までにここまで進めたい」と短いスパンでの目標となるものが短期目標なのです。受験勉強を始めるにあたっては、まずは「夏休みまでにどの教材をどこまで完璧にする必要があるのか」を考えてみましょう。最初に自分が手を付けなければならないことが、ハッキリと明確になっているかと考えます。

(2)ルールを作って学習の習慣化を

 前項では、目標の設定についてお話ししてきましたが、目標を設定しただけではまたスタートをしていません。実際に学習計画を立てて勉強をしてゆきましょう。先ほどの短期・中期目標の話を参考に、夏休み前まで終わらせなければならないことを整理して、どのようなペースで進めてゆかなければを洗い出してみましょう。この段階を踏むことで、各教科で自分がどのくらいの範囲をこなさなければならないかがある程度わかってくるかと考えます。

 次に必要なことは、「受験勉強の習慣化」になります。皆さんは、起床時間や登校時間、部活が終わって帰宅した後に夕食とお風呂を済まし、予習復習の勉強をして就寝・・・、といった通常生活においてある程度のルーティンができているのではないでしょうか。これからは、受験勉強という新たな習慣を今までの生活に組み込まなければなりません。人間はどうしても保守的なもので、新たな習慣を取り入れることに対しては心身ともに抵抗があるものです。しかも、「勉強」という負荷になるものであればなおさらです。

 高校生活というのは忙しいものかと考えます。通常の学校生活のほかにも部活動や習い事、そして生徒会活動やアルバイトなど、皆さんは勉強以外にもたくさんの活動をしていることでしょう。こうした数多くのことを並行して生活しているなかで「受験勉強」という新たな習慣を取り入れることは、大変な努力が必要です。そのために、ただ「受験勉強をする時間を確保しよう」といった漠然とした意気込みだけではなく、具体的にどのように受験勉強時間を確保してゆくのかルールを自分で作ってゆく必要があります。

 では、実際にどのようなルールを作ればよいのかをお話しします。このルールとは、基本的に生活習慣と学習習慣を自律してルール化してゆくことを目指してゆくものです。「受験勉強」という新たな習慣を追加するわけですから、今までの生活・学習習慣のなかにどのように加えるのかを考える必要があるのです。具体的に言うと、「毎朝6時に起きて勉強をしてから登校する」「勉強中はスマートフォンの電源を切る」「毎日○時間以上は机に向かう」「毎晩0時には就寝をして寝不足にならないようにする」といったものが例となります。ここで注意しなければいけないことは「早起きをして勉強する」「毎日机に向かう」など、やや抽象的な表現に止まり、具体的ではないルールにはしないようにすることです。なぜならば、例えば「早起きをして勉強する」という目標を立てたところで「早起き」とはどういうことなのでしょうか。何時に起きれば早起きと言えるのでしょうか。こういったあいまいな表現ではなく「毎朝6時に起きて勉強をしてから登校する」といった、数字を入れるなど具体的なルールでなければならないのです

 上記のような点を意識しながら、受験勉強を開始してゆきましょう。もちろん、継続することは大変なことであると考えます。しかしながら、目標を意識してルールを守ることを目指して生活してゆくうちに、自然と学習習慣は身についてゆくはずです。まず、最初の2週間は特に大変と感じることが多いことかとは想像できますが、続けることによって勉強することが「当たり前」になってゆくでしょう。「歯を磨くように勉強する」が最終目標です。ここまでの意識にたどり着けば、受験勉強そのものが苦痛でなくなってきますよ。

おわりに.

 本稿では、「学習を習慣化させよう」というテーマ設定をもとに、短期・中期目標の設定についてと学習を習慣化させるためのルール設定について紹介させてもらいました。小刻みなスモールステップで目標を設けることによって、目前で行なわなければならないことを明確にしてモチベーションを上げることがまずは重要です。そして、その目標を達成するためにはやり切ることが重要ですので、目標達成のための具体的なルールを設けて実行する。こういった努力を行うことによって、不安や迷いが多い受験勉強をスタートさせ、しっかりと習慣化させてゆくのです。

 本稿で紹介したものは、受験勉強を習慣化させるためだけの方法ではありません。日常学習習慣はもちろんのこと、勉強のみに関わらずあらゆる「始めようと考えている新しい習慣」に適用することができるのです。是非、新しいことを始めようと検討している方がいましたら、本稿を参考に習慣化させてみていただけると嬉しいです。