【7月 大学受験通信】 ~総合型・推薦型の志望校決定~

はじめに

 7月に入り、これから暑い日々が続く日々が続きます。皆さんはくれぐれも熱中症などにならないよう、身体のケアを怠らず、無理のない行動をとることを心掛けてください。さて、1学期の学年末考査が終了すると、いよいよ高校3年生は進路決定に向けて大きく動くことになります。多くの高校で指定校推薦枠の発表や、進路についての説明が行われる時期になってゆきます。さらに、大学からは入試要項の発表などが行われるなど、一気に受験に向けた高校3年生の「熱」が高まってゆきます。

 そして、この7月は総合型選抜や学校推薦型選抜を受験する生徒にとっては、受験校を絞り込んでゆく時期になります。これらの選抜方法は出願時期が早いだけではなく、オープンキャンパスへの参加が必須であったりするなど夏休み中からの対策が合否をわけることになるのです。すなわち、総合型・学校推薦型選抜で合格を勝ち取るためには、この7月に確実に第一志望校(志願先)を決定し、合格するために必要な対策を始めなければ、他の受験生に後れをとることになってしまいます

 そこで、本稿では総合型選抜や学校推薦型選抜で合格を目指す受験生を対象に、最終的に志願先を決定するにあたってカギとなる要素とその理由について解説してゆきます。是非、確実に合格を勝ち取るためにも、参考にしていただければ幸いです。

総合型・推薦型の志望校決定

(1) 志願先の絞り込みかた

何校受験すればよいか

 まず、総合型選抜(以下「総合型」)や学校推薦型選抜(以下「推薦型」)を受験するにあたっては、どのくらい併願を考えれば良いのでしょうか。ご存知の通り、一般選抜においては複数の大学・学部を併願して受験することは当たり前のことで、一人当たり少なくとも5校程度は併願するのではないでしょうか。これに対し、総合型や推薦型は多くの大学を併願することは基本的には難しいと考えてください。そのため、総合型や推薦型を受験するにあたって気を付けるべきことは、むやみに上位校をめざすのではなく、合格可能性の高い大学を確実に受検することなのです。

 その理由は、総合型でも推薦型でも多くの大学は「合格した場合は、その大学への入学を確約する」という「専願制」が取られている場合がほとんどで、併願できることが少ないからです。総合型や推薦型の公募制推薦の場合では一部の大学で「併願制」が認められている場合もありますが、仮に併願が認められていたとしても試験日程などの都合により、相当うまく都合がつかなければ複数の大学を総合型や推薦型で併願することは困難であると考えます。

 また、推薦型でも指定校推薦においては、おおよそ9月に実施される校内選抜に応募できる大学は1校のみに限られます。もし校内選抜に通過しなかった場合には、残った指定校枠から再度別の大学を選択するか、または総合型や公募制推薦への出願へ向かうことが基本線になります。当たり前ですが、指定校推薦の校内選抜に通過した場合は、他の選抜方法と併願することは基本的には許されない専願制になります。

 また、総合型や推薦型を受験するにあたって併願が難しい理由として、受験準備の煩雑さが挙げられます。過去問対策は必要であるものの学力勝負となる一般選抜とは異なり、総合型や推薦型は大学によって、「調査書」「志望理由書・エントリーシート」「面接」「小論文」「プレゼンテーション」といった様々な要素を組み合わせて選考を行います。これらは大学によってさまざまな特色があることから、受験大学の入試傾向に合わせた十分な準備が必要になるのです。

 そのため、総合型や推薦型を併願で受験する場合は同じ時期に並行して複数の大学の受験対策を行わなければならないことから、その労力は膨大なものになります。このことから、どれだけ受験対策が順調であったとしても併願できるのは多くても3校が限界であり、総合型や推薦型で受験する場合には安易に併願を考えずに慎重に検討すべきであると言えます。

(2)各選抜方法における絞り込みかた

総合型・学校推薦型(公募制推薦)選抜の場合

 総合型や推薦型(公募制推薦)において志願先を絞り込むにあたって重要なのは、各大学から公表されている「入試要項」「募集要項」で確認することができる「選抜実施の有無」「出願資格」「選考時期」「合格倍率」となります。ここで注意しなければならないのは、総合型や公募制推薦を実施する大学であっても、本当に自分が受験する学部・学科で募集があるのかという点です。同じ大学でも学部・学科によっては、総合型や公募制推薦による募集は行われないという場合も決して少なくありません

 次に、選考時期についても注意が必要です。選考時期で注目すべき点は、「出願期間」「1次選考結果通知日(実施する場合)」「2次選考実施日」「合格発表日」「入学手続締切日」です。特に「出願期間」と「入学手続締切日」といった情報を上手く利用することによって、他の大学と併願できる可能性も出てくるためです(併願可能な大学を受験する場合のみ)。

 そして、最も重要な情報は「合格倍率」になります。倍率が2倍未満であればかなり合格に見込みがある、4倍未満であれば合格する可能性は十分にある、と考えてください。一方で、倍率が4倍を超えるような場合になってしまうと、合格するためのハードルはかなり高いものであると考えてください。合格可能性を高めるためには、倍率が低いに越したことはありません。そのため、もし志願先を2択で迷うのであるならば、決定的な違いがない限りは低倍率となっている大学の受験を推奨します

学校推薦型(指定校推薦)選抜の場合

 推薦型のなかでも指定校推薦の場合は、特に学校内での情報戦になります。指定校推薦の校内選抜への出願をする受験生に関する情報は、学校内のトップシークレットで教員がうっかり漏らしてしまうことはありませんし、同級生がむやみやたらに話すこともないと考えます。指定校推薦においてまず重要なのは校内選抜に通過することですから、少しでも自分が有利な状況で出願できる大学・学部を考えてもらいたいのです

 指定校推薦で他の受験生と競合した場合、自分より学習面・活動面で優秀な成績を収めた人と競っても逆転合格できる可能性はほぼ見込めません。そのため、確実に指定校推薦の校内選抜を通過したいという場合には、無理せず出願条件が自分の「学習成績の状況」よりも出願条件が低くなっている大学・学部にエントリーすることを推奨します

そうは言いつつも、「評定はギリギリだけれど、どうしてもこの大学に挑戦したい」という場合もあると考えます。また、いくら出願条件を十分に満たしているとはいえど、誰と競合するかもわからない校内選考は「水物」であることから、何が起きるかはわかりません。指定校推薦を目指す場合には、最悪の事態(校内選抜を通過しなかったとき)のこともあらかじめ想定しておくことが重要です。どんな状況であっても、総合型や公募制推薦、さらには一般選抜の受験までを見据えた準備をしておくことが肝要と言えます

おわりに.

 本稿では、総合型や推薦型を受験するにあたって志願先を絞る際の留意点を解説してきました。やや保守的な内容となってしまいましたが、筆者の言いたいことをまとめると「受験機会の少ない総合型選抜と学校推薦型選抜では、確実に進学先を確保するプランで受験することが重要である」ということです。もちろん、挑戦することを否定しているわけではありません。その場合は併願プランをしっかりと準備し、確実に進学先を確保できるような状態にしたうえで挑戦校へチャレンジして欲しいと考えます。

 とにもかくにも、志願先が決まらなければ受験準備は始めることができません。まだ志願先を絞り込めていないという受験生の皆さんは、本稿の内容や「学校案内」、そしてオープンキャンパスに参加するなどして一刻も早く決定しましょう。そして、志願先の入試内容に合わせた適切な受験対策を行ってゆくことが合格への最短ルートとなるでしょう。