【7月 教育支援通信】 嘘をつく子どもへの対応法

はじめに

 何年か前に「子どもは嘘をつく生き物」と発言してマスコミに叩かれた校長がいました。あまりに正直にものを申しすぎて世間から批判を受けてしまったのですが、教育現場にいる人間は「何も間違えたことを言っていない」と感じたものでした。

「自分の子どもは嘘つきだ。」とがっかりしている保護者の皆さん。ご安心ください。ほとんどの子どもは嘘をつきます。それでは、なぜそうなっているのか。今回の教育支援通信では、「なぜ子どもは嘘をつくのか」そして「嘘をつく子どもへの接し方」について考えていきたいと思います。

なぜ子どもは嘘をつくのか

原因① 叱られないための自己防衛

 この原因は、親の子どもへの普段の接し方によるものです。普段から子どもが失敗したときにすぐに叱ってしまうような親に対しては、子どもは叱られたくないために嘘をつくようになるのです。

 子供は失敗をしながら成長していきます。その失敗が起こるたびに厳しく叱っていたら、子供は成長できないわけです

 感情的に叱るのではなく、冷静に「これをするとこうなるから次からはやめようね」と伝えてあげれば良いのです。このように叱るのではなく、解決策を教えるような形にすると、子供は失敗しても素直に親に話すようになります。嘘をつく選択肢がなくなるのです。

 嘘は習慣化します。はじめは親に対してだけ嘘をついていたとしても、そのうち友人や教師に対しても嘘をつくようになります。いわゆる虚言癖というものです。そうなる前に、子どもへの接し方を変えて、子どもが嘘をつく必要がなくなるようにしましょう。

原因② 自分を大きく見せたいがため

 人間の自然な心理として「自分をよりよく、より大きく人に見せたいという願望」があります。

 その願望を「虚栄心」というのですが、虚栄心の強い人は「自分を大きく見せる嘘」をつく傾向があります。自分を大きく見せる嘘は必ず周囲にバレますし、周囲は離れていきます。子どもの世界では、嫌われ孤立し、いじめの原因にもなります

このような嘘をつくようになったら、すぐに親が対処しましょう。

 虚栄心の強い人の心理は、自分に自信が無くつい見栄を張ってしまうという1点に尽きます。自己肯定感が低い子どもは、とてもかわいそうです。もっと親は子どもに自信を与えてください。いいところをいっぱい見つけてあげて「今のままでいい」と抱きしめてあげてください。「褒めたら調子に乗る」「現状を認めたら成長しない」などという考えは後回しです。その考えに至る前の段階で赤信号が出ているのです。

 親の接し方次第で、子どもは等身大の自分を受け入れます。そうすると、他人を素直に認めることのできる人間になるのです。そのような人格になって初めて、他人の協力が集まる幸せな人生を歩むことが出来るのです。

原因③ 心配をさせたくない嘘 / プライドを守るための嘘 / 誰かをかばうための嘘

 子どもは多かれ少なかれ親に対して隠し事があります。これは大人になっていく過程での正常な発達ですので、咎める必要はありません。(「叱られたくないから隠し事をしている場合」は、これより一段次元の低いパターンです。原因①を参照ください。)

 小学生・中学生が親に対して隠し事をするのは、たいてい人間関係のトラブルです。「心配をさせたくない嘘・プライドを守るための嘘・誰かをかばうための嘘」は、それに起因して生じます。

 このような種類の嘘をついているときは、無理に聞き出そうとしたり説教じみた話をしたりすることは厳禁です。より一層心を閉ざしたり、嘘の上塗りをしたりする可能性があります。しかし、思春期の子どもは、自分からは、なかなか親には本当の話をしないことでしょう。それが普通ですので、歯がゆく思わずに、一歩引いて温かく子どもの様子を見守りましょう。

おわりに

子どもの嘘は、ほぼ100%大人なら見抜けるはずです。

 見抜くたびに叱る必要はありません。原因①にもあるように嘘が悪化する場合があります。叱る必要はありませんが、嘘は通用しない(バレるものだ)という事実は子どもにわからせましょう。

 子どもの嘘は、今現在の心を映す鏡です。嘘は、それをきっかけに子どもの心に寄り添うことが出来るチャンスでもあると前向きにとらえて、子どもに向き合いましょう。