【8月 大学受験通信 】
小論文基礎講座

はじめに.

 時は8月、暑い夏もまだまだ続きます。高校3年生は、自分の目指すべき進路がハッキリと決まってくる頃ではないでしょうか。おそらく、1学期の評定が返却されたとともに、学校では指定校推薦の一覧が発表されるなど、周囲の進路に向けた動きもより一層高まってきているものと推察します。

 この時期になると、総合型選抜や学校推薦型選抜を視野に入れる受験生は、普段の教科学習に加えて志望理由書の記載練習や面接対策など、今までにやってこなかった分野に対しても目を向けなければなりません。そして、こうした総合型選抜や学校推薦型選抜への対策で、今までで最も馴染みが少ないものが「小論文対策」ではないでしょうか。高校生の皆さんは、小学校から今に至るまで「作文」を書く機会は多くあったと考えますが、「小論文」については書く機会があったという人がどれだけいるでしょうか。そして、初めて触れる未知の小論文に対して、「自分はしっかり小論文を書くことが出来るのだろうか」という不安を抱えている人も、少なからずいるのではないかと推察します。

 恐らくですが、入試で小論文が必要だという人は、学校などで小論文の対策講座が実施されるものと考えられます。学校や塾での対策をフルに活用してしっかりと練習すれば、必ずや入試で合格する小論文の力は身につくはずです。そんな中、本稿では「小論文基礎講座」をテーマとして、小論文を書く上で必要な基礎知識や考え方などについて解説しようと考えております。未知なる小論文に対して、読者の皆さんが「小論文とはどんなものなのか」イメージを作ることが出来るようになれば幸いです。

小論文基礎講座

(1)小論文の試験とは

① 小論文と作文の違い

 早速ですが、本題に入ってゆきましょう。最初のトピックは「小論文」と「作文」の違いについてです。小論文にせよ、作文にせよ、長い文章を自分で書き連ねてゆくという点においては共通していると言えるでしょう。しかしながら、小論文と作文では、その書くべき内容については大きな隔たりがあります。小論文を作文と同じ感覚で書いてしまうと、場合によっては入試で全く評価されない内容になってしまう恐れすらあるのです。そのため、まずは小論文と作文の違いについて理解しましょう。

おおまかに小論文と作文の違いを述べると、上の表のようになります。作文は思ったことや感じたことを思いのまま書くことが許されますが、小論文はそうした感情を述べるのではなく、与えられた課題に対して筋道を立てて(=論理的)、具体的に論述してゆかなければ成り立たないのです。そういった意味では、小論文は出題者(大学の先生)と解答者(受験生)との対話であると考えていいでしょう。

小論文=「出題者(大学の先生)」と「解答者(受験生)」の対話!!

② 小論文は「入試科目」

 説明した通り、小論文は出題者との対話であり、解答者である受験生の皆さんは出題者が求める内容の文章を書けるようにしなければなりません。出題者である大学の先生は「その分野のプロフェッショナル」であるわけですから、誤魔化しが効かないということは想像に難くないでしょう。つまり、皆さんは問題文から「出題者が書いてほしいこと」をつかみ取り、「大学でその学問を学ぶものとしてふさわしい内容」の文章を論理的に書けなければ、合格基準に満たないのです。

 このように説明すると、一見難しいことのように感じてしまうかもしれませんが、小論文も英語や数学と同じように「入試科目」の一つであると考えてください。皆さんは、試験前になると単語を覚えたり、ワークを解いたりと、試験対策を行うはずです。そうした、教科と同じように小論文も「入試科目」である以上、しっかりと準備や対策を行えば対応できるようになるのです。ただし、英語や数学のような教科とは異なる性質であるがために、不安に感じてしまう人が多いのではないかと推察します。  では、小論文はいったいどのように対策を行ってゆかなければならないのか、紹介したいと考えます。まず単純な話ですが、そもそも今まで小論文を書いたことがない皆さんは、「小論文の書き方」(=論理的文章の書き方)を学ばなければなりません。これは、授業を受けるというよりも、自分から行動しなければ身につきません。以下を参考にしてみてください。

このような方法で、小論文の書き方を習得してゆきましょう。おススメの方法としては、いきなりゼロから小論文を書いてみるのではなく、まずは模範解答などを参考にしながら書き方を真似て書いてみてください。そして、書いたら必ず学校や塾の先生に添削をしてもらいましょう。自分だけでは、書いた小論文がしっかりと書くことができているのか、判断しかねるでしょう。小論文の上達方法で一番重要なのが、何度も何度も納得する答案が書けるまで添削してもらい、修正を重ねてゆくことだと考えます。問題を解く量も重要ですが、小論文では一問一問の完成度もより大切になるのです。

 そして、小論文を書くためには書くための材料(ネタ)がなければ。内容が薄っぺらなものになってしまいます。特に、その分野のプロフェッショナルである大学の先生と対話するためには、少なくとも自分が志望している学部・学科で学ぶ学問分野についての知識がなければ、対話をすることが難しいでしょう。そのため、合格する小論文が書けるようになるためには、書き方の習得と並行して書くための「背景知識」を習得する必要があります。「釈迦に説法」のような内容かもしれませんが、今一度背景知識の習得方法についておさらいしておきましょう。

 当然ながら、法学系に進みたいのであれば法学分野、工学系であれば工学分野、医療系であれば医療分野の背景知識といったように、自分が目指す学部・学科に合わせた学問分野の背景知識が必要となります。そのため、教科書レベルだけで背景知識の習得がまかなえる場合もあれば、関連書籍に目を通したり、インターネットなどから情報を得る必要があったりなど、背景知識を得る方法は人によってさまざまであると言えるでしょう。背景知識の習得には、出題の傾向に合わせた適切な習得方法を選択するようにしてください

 ここまで説明したことをまとめると、合格する小論文が書けるようになるためには、「書き方の練習」と「背景知識の習得」が大きな骨格となります。そして、これらは英語や数学のような教科学習と同じように短期間で身につくものでもありません。小論文が入試で必要ならば、少なくとも試験日の3カ月前くらいからは他の教科とのバランスを考えながらコツコツを進めてゆく必要があると考えます。習得した背景知識のアウトプットがてら、継続的に文章を書く作業を行うことが大切と言えるでしょう。

合格する小論文=「書き方の練習」×「背景知識の習得」

③ 小論文の出題形式

 そして、小論文対策で必要なことは、各大学の出題形式に合わせた対策を行ってゆくことです。書き方の練習と背景知識の習得はもちろん重要なことですが、同時にどのような形式で出題されるのか、そして「制限時間・字数」にも目を向けなくてはいけません。過去問題を確認するなどして、あらかじめ受験する大学の小論文問題が、「どのような出題形式で、制限時間と指定字数などの条件はどうか」といった基本的な内容をしっかりと押さえたうえで、対策を行ってゆきましょう。

 上の表が、小論文の問題で問われる出題形式の大まかな分類になります。大学や学部・学科によって出題形式は異なりますが、概ね短文を読み取って自分の考えを論述してゆく「テーマ型」が一般的な出題形式です。過去問題を確認するなどして、自分が受験する大学がどの形式で出題されているのか、しっかりと確認して対策を行ってくださいね。

出題形式・制限時間・字数に合わせた対策を!

(2)小論文でやってはいけないこと5つ

小論文の答案で気を付けなければならないことは?

 さて、小論文対策について紹介してきましたが、これから学校や塾での小論文対策を通じて、多くの「やるべきこと」について説明を受ける機会が増えると考えます。「やること」を決めることも大切ではありますが、「やらないこと」を決めることも非常に重要です。この章では、皆さんがこれから小論文の対策を行うにあたって「やってはいけないこと」「注意しなければならないこと」について紹介してゆきます。本稿では、5つの禁止事項について表にまとめました。これから紹介することを小論文の試験でやってしまうと、減点対象となってしまいますので注意してくださいね。

何事も「やること」と「やらないこと」を決めることが大事!

おわりに.

 本稿では「小論文基礎講座」をテーマとして、小論文を書く上で必要な基礎知識や考え方などについて解説してきました。本稿で解説したことは当たり前ですが合格する小論文が書けるようになるための「ほんの一部分」の要素に過ぎません。是非、小論文を入試で必要としている受験生の皆さんが本稿をきっかけに、小論文の対策をスタートしていただければ幸いです。とにかく小論文が上達するコツは小論文を自分で書いて、そして完成するまで何度も添削と修正を重ねてゆくことに尽きます。たくさん練習をして、合格する小論文が書けるようになることを期待しています。