はじめに
思春期とは、小学生高学年あたりから始まる第二次性徴に伴い、脳と身体が子どもから大人へと劇的に変化し、その影響を受けて、考える力、心にも大きな変化が起こる時期のことをいいます。思春期においては、親や大人に今まで言われてきたことすべてに対して「それは本当に正しいのだろうか?」という疑問が生じています。そのため、親や大人の言うことを聞かなかったり、反抗したりします。
「思春期 = 反抗期」となることが多いのですが、それは大人への階段を上っている途中におこるいたって正常な現象です。しかし、対応を間違えると危うい道へそれる危険性もはらんでいますので、今回の教育支援通信では、思春期の子どもを持つ保護者の皆様に役に立てる知識をご紹介できればと思います。
思春期の子どもの特徴
男子
思春期の男子は「格好良くなりたい」「女子にモテたい」「目立ちたい」という願望が顕著に現れます。
そして、それを明確に表に出せる子とそうでない子に分かれます。
前者は、ちょっと服装を不良っぽくしてみたり、たばこを吸ってみたり、自転車を改造してみたりと、いろいろやりたがります。親としては非常に心配だと思うのですが、思春期の男子には当たり前のことですので、それほど心配しなくても大丈夫です。
心の底から不良になりたいと思っているわけではなく、ただ不良っぽい恰好をしてみたいだけだからです。
いずれ時期が過ぎると元の姿に戻るので安心してください。
後者は、格好つけることに抵抗があります。周りのみんなに指摘されることを恐れているのです。
しかし、心の内には「目立ちたい」という願望は必ず持っています。思春期のときに、どうにかこの願望をかなえさせたいものです。それにより自己肯定感が高まり、その後の人生の糧になるからです。
「モテたい」「目立ちたい」という心理状態にありながら、実際そのようになれるのは限られた一部です。ですので、大半の思春期の子どもはイライラしています。思い通りにならないうえに、(大人になるために)やらなければならないことが次から次へと押し寄せてくるのです。
女子
女子は4歳ですでに一人前の自我を持つと言われています。女性は右脳と左脳の連携が優れていて、観察能力・察する能力が男子の6倍高いとも言われています。
その女子が10歳を過ぎると生殖ホルモンが出てくるようになり、より一層考え方が大人に近づいてきます。このころから一人前の大人と同じ扱いをする必要が出てきます。
しかし、脳が大人と同様になってきたとしても経験値は子どもの少なさなので、大人と子供が同居したような精神状態です。
思春期の頃には、女子はすでに自分を客観視できるようになっています。ですので、自分の価値観を持つようになります。しかし、経験値の少なさから、自分の価値観との相違を受け入れられない傾向があります。
価値観のズレを感じる人に対しては何を言っても聞く耳を持たなかったり、意地悪く接したりします(受け入れられないのです)。外面はうまくふるまえるので、相手によって態度を変えるといった二面性を感じるかもしれません。
周りの友達も思春期です。大人と子どもが同居している精神状態のこの時期の女子は、とにかく意地悪です。当然のように、仲たがいをすることも増えてきます。女子は男子と違って、直接攻撃するというよりは、自分の周りに味方を増やし相手を孤立させるという攻撃方法をとるので、どのグループに自分が属するかといったことに腐心して、人間関係で苦労しています。
苦労しているうえに、(大人になるために)やらなければならないことが次から次へと押し寄せているので、とにかくイライラしています。
共通
思春期における男子と女子の特徴を述べましたが、共通していることは「とにかくイライラしている」ということです。
今までは「心の行くままに」生きてきました。ただ、大人になるとそれでは生きていけません。
周りの目(どうみられているのか)・やらなければならないこと・やりたいのに我慢しなければならないことetc.
それらが大人への階段として一気に押し寄せてくるのです。
子どもらも頭の中ではわかっています。「自分は大人に近づいているから、○○の行動をしないと。〇〇は我慢しないと」と。でも体が言うことを聞かないのです。だからイライラしているのです。
思春期の子どもを持つ保護者の皆様は、この気持ちを理解して接することが大事なのです。
接し方
思春期の子どもへの接し方で、男女共通して言えることは、「話すタイミングが大事」という意識を持つことです。
イライラしているときに無理に伝えても何も入りません。そういうときは少しほおっておいて、時間を空けましょう。後で落ち着いたところで話すと、案外すーっと入っていきます。「今なら話せるかな?」と常にタイミングをうかがってください。
「なんで、子どもの顔色をうかがわなければならないだ!」と反論もあるかもしれません。しかし保護者の皆様が子どもを教育する思いがあるのならば、伝わる話をしなければなりません。
どんなに言葉を厳選した感動的な名演説を打ったとしても、タイミングが悪ければ1%も子どもの心には伝わりません。こちらは大人なのですから、大人の対応をしましょう。
注意点もあります。
思春期の子どもはヒエラルキー(上下関係)に敏感です。子どもの顔色をうかがっているように思われると、親としての権威が失われる場合もあります。
なので、「普段はタイミングを計っているので、少しほうっておいている接し方」であったとしても、「このラインだけは守れ」というルールを決めておく必要があります。そのルールを破ったら全力でその場で激しく叱ってやりましょう。
ルールですが、親としてここだけは絶対に譲れないというラインを作るということです。
例)たばこと酒は許さない! 万引きは許さない! 嘘は許さない! 約束は守る!
「毎日3時間勉強する!」などといった子どもの生活を制限するものにしてはいけません。思春期の子どもを縛り付けるようなルールはより一層溝を深くします。
そして、ここだけは譲れないというラインを決めた場合、必ず問題を起こす前に子どもに伝えておきましょう。きちんと伝えておくことで、そのラインを超える前に止まる可能性も高くなりますし、後で叱ったときも、子どもが素直に聞き入れられます。 そのラインまではある程度許しましょう。しかし、ラインを超えたら子どもがどれだけ反抗しようが、必ずぶつからないといけません。
これをしないと、本当に不良になってしまいます。
おわりに
思春期の子どもへの接し方はとても大変です。
しかし、立派な大人になるための道探しの真っ最中なのです。そのための道しるべに親がならないといけません。
難しいことはありません。長々と文章を書きましたが、実は二言でまとめられるのです。
【まとめ】
- 少し放置気味にする
- 譲れないラインを越えたら全力でぶつかる
皆様の子育てへのお手伝いを少しでもできれば幸いでございます。
学習面以外でもお悩みのことがございましたら、お通いの教室までお気軽にご相談ください。