はじめに.
12月に入り、いよいよ受験勉強も「仕上げ」の時期に入ろうとしています。一般選抜を受験する受験生のほとんどが、過去問題や予想問題に本格的に取り組む時期ではないでしょうか。残りは2~3ヶ月です、最後の最後まで全力でやり抜いていください。
さて、多くの受験生が11月中に一通りの併願プラン(入試受験日程)を作成し終えた段階ではないかと推察します。11月中に作成した併願プランを基にして面談が行われ、最終的な併願プランを作成してゆく流れになるでしょう。例年、「早く併願プランを作成しなければ」と焦ってしまう生徒が散見されます。しかしながら、一般選抜の出願が始まるのは年が明けて1月に入ってからになるのです。そのため、併願プランに悩む人は焦る必要はなく、12月の1ヶ月間を活用してしっかりと納得する形のプランを作成するようにしましょう。
本稿では、併願プランを最終決定するにあたって、いかに受験生の皆さんの負担を減らすことができるかについて、その方法を解説してゆきたいと考えます。肉体的・精神的負担が大きい一般選抜。少しでも負担を軽減するために、併願プランを最終調整するにあたっての参考になれば幸いです。
併願校決定への決め手とは
(1) あくまでも第一志望がベース
まずは、併願プランを最終決定するにあたって可能な限り避けたい事項について、解説させてください。併願プランを作成するにあたって最も留意しなければならない点は、「第1志望校に合格する」という大前提を忘れてはならないということです。無茶な併願プランを組んでしまったことによって、一番の目標である第1志望校の受験準備に支障があってはいけません。ゆえに、併願プランを作成するにあたっては第1志望校の受験を中心としてプランニングにするべきであると考えます。
① むやみに挑戦校を増やす
仮に適切な実力相応校・安全校の選択ができていたとしても、なるべく避けたいプランになります。なぜかというと、「挑戦校=自分の実力よりも高いレベルの大学」となり、受験準備がより一層大変になるからです。挑戦校ともなると、難易度が高くなるため受験対策の手間が増大してしまいます。また、あまり考えたくありませんが挑戦校の受験が増えると不合格になるリスクも高まり、自信喪失へつながる恐れもあります。そうなると、必然と本来第1志望校の対策に割くための時間や、実力相応校・安全校の対策の時間が手薄となってしまい、最悪足元をすくわれてしまう可能性すら出てきてしまうのです。
何度も書きますが、目標は「第1志望校に合格する」ことです。むやみに挑戦校を増やすことは「挑戦」ではなくて、無謀な試みになりかねないことを覚えておいてください。
② 偏差値だけを見て併願校を決める
こちらはよくある併願プランの作成方法で、「併願校だから、そこまで詳しく調べなくていいや」というような考えで、安直に偏差値だけで決めてしまうパターンです。併願校のなかでも、特に「安全校」として抑えの意味で受験する場合、志望順位が低いことからついついよく調べずに受験をしてしまう受験生が散見されますが、これは非常に危険です。事前に調べることを怠り、偏差値だけで受験を決めてしまう場合、どのような状況に陥ってしまう可能性があるか、考えてみましょう。
一つ目は、受験科目が自分の勉強している科目とは異なっている場合や、過去問を解いたときに相性が非常に悪い場合など、そもそも受験をすること自体が困難である可能性があります。私立大学は、それぞれで独自に試験科目を定めたり、試験問題を作成したりしているわけですから、いざ受験の準備をしようと直前に過去問を解いてみたら、「自分は国語については現代文しか勉強していないけれど、古文が出題される大学だった」「抑えの大学なので対策を後回しにしていたけれど、いざ過去問題を解いたら出題傾向が自分に合わず、正解率が5割に満たなかった」などといった事態になりかねません。そのため、併願プランを完成し出願する前までに、少なくとも受験科目や出題傾向などは過去問題を解いてみることなどで、併願先として自分に相応しいのか否かを判断してから受験を決めましょう。
二つ目は、入学することになった場合にキャンパスが実は遠方にあったというパターンです。複数のキャンパスを有する大学を受験する際にありがちな事例です。特に、受験時は受験するキャンパスを選択できる場合もありますから、事前によく調べないまま受験してしまうと思わぬ困難に巻き込まれる可能性があります。合格して入学手続きをしようと準備をしていたら、実は自分が通うことになるキャンパスは受験した時のキャンパスではなく、遠方のキャンパスだったなどといったことがないように、こちらも事前にしっかりと調査をして、合格して通学するとなった場合はどのキャンパスに行くことになるのか、確認しておく必要があります。
本章で書いたことは一見冗談のように見えるかも知れませんが、意外と起こりがちな事態なのです。併願校で志望順位が低いからといって偏差値だけで受験を決めず、自分が通学することになった時のこともしっかりと考えて、併願プランは考えなくてはなりません。
(2) 入試方式・日程を上手に活用しよう
本章では併願プランを考えるにあたって、受験時の負担を減らすことが可能となる受験パターンについて紹介します。受験生の皆さんは、併願プランを作成するにあたって十分に調査しているかとは考えますが、今一度次のパターンを確認してみてください。一般選抜の受験は、普段以上の長距離移動を伴うだけではなく、連日試験を受けなければならないなど、肉体的・精神的負担が非常に強いものです。少しでも効率化して負担を軽減するだけではなく、一番力を入れなければならない第1志望校の受験に全力を注げるように準備をしてゆきましょう。
① 毒にも薬にもなる「共通テスト利用入試」
共通テスト利用入試は、ご存知のように共通テストを受験するだけで出願資格が生まれる受験方式の一般選抜で、大多数の大学で導入されています。共通テスト利用入試の最大の利点は、共通テストを受験していれば複数の大学に出願できるだけではなく、原則は共通テストの結果のみで合否判定が行われるため個別試験の準備が必要ない点であります。一方で、出願のハードルが低い一方で共通テスト利用入試は個別試験が行われる方式と比較して募集人数が少なく倍率が高くなりやすい傾向から、個別試験よりも合否のハードルが高い場合が大多数です。そのため、個別試験よりも共通テストの方が得点しやすいという受験生以外は、原則共通テスト利用入試は挑戦校の受験では推奨していません。「実力相応校」かまたは「安全校」での受験で併願プランに組み込むことが無難と考えます。
本稿で推奨したいと考える共通テスト利用入試の活用方法は、共通テスト受験後でも出願が出来る大学です。共通テスト利用入試は、出願期間が共通テスト実施日より前の大学もあれば、共通テスト実施後でも出願が可能な大学とで分かれます。後者の場合ですと、共通テストの結果を踏まえたうえで出願ができるので、共通テストを終えて自己採点をした結果を見てから合格可能性を判断し、出願することが可能なのです。共通テスト利用入試は個別試験よりも受験料が割安になるので、こういった大学を上手く活用することによって、受験の負担だけではなくお金の面でも節約することが可能となるのです。
② 試験日程
また、各大学が設けている個別試験の日程も上手く活用してゆきましょう。特に私立大学においては、個別試験の方式が多様化しており、受験生は受験にあたって複数の選択肢を有していることがほとんどです。例えば、「試験日自由選択制」を行っている大学では、複数の受験日程を設けているため、他の大学の試験日程と調整して受験日を決定することができます。さらに、志望順位が高い大学が採用している場合には、複数の受験機会を得られることになりますし、基本的には出題傾向にも大きな変化はありませんので、試験慣れをすることもでき合格可能性も高まるものと考えます。この場合、複数受験することによって受験料が減額される大学もあることから、利用する価値が高い方式と考えます。
また、近年では受験者確保のために「全学部日程入試」を採用している大学が増加しています。個別試験においては、学部・学科によって異なる問題で試験を行っている大学でも「全学部日程入試」を実施している場合がありますし、そもそも最初から全学部とも同じ問題で試験を行う場合もありますので、大学によって「全学部日程入試」の扱いは異なっています。しかしながら、「全学部日程入試」の大きな利点は「共通テスト利用入試」とやや似ていて、一度の試験で複数の学部・学科を併願できる場合があるという点です。全学部とも共通の問題で試験を実施するわけですから、学部・学科ごとの入試と比較して併願する場合は対策を行う負担が軽減されますし、併願することによって受験料が減額される大学もあります。
このように、特に私立大学を受験するにあたっては、各大学が設けている受験方式をよく調べたうえで併願プランを作成すれば、受験日程や受験料の面で負担が軽減される可能性があるのです。第1志望校の合格に向けて、少しでも負担を軽減できるよう、併願プランを作成するにあたっては各大学の試験方式には十分に気を配ってみてください。。
おわりに.
本稿においては、最終的な併願プランを作成するにあたって、注意しなければならない落とし穴と、上手に活用することで受験の負担が軽減される受験方式について紹介してまいりました。共通テストへのカウントダウンも始まり、これからの時期は緊張感も高まってゆくことと考えます。第1志望校へ合格するためには、受験勉強をするだけではなく、こうした併願プランを綿密に立てることによっても合格可能性を高めることが可能となるのです。皆さんにとって、最も適切と考えられる併願プランを完成させ、残りわずかとなった受験までの時間を精一杯やり抜いてください。皆さんが受験勉強という困難を乗り越え、合格をつかみ取ることを心より応援しております。