はじめに.
現在日本の教育界では、大学入試はもとより全ての校種を対象に外国語教育の充実が叫ばれております。近年、小学校5・6年生は外国語が「教科」となって評定が付くようになっただけではなく、小学校3・4年生にも外国語活動として授業が開始されています。こうしたなかで英語4技能(聞く・話す・読む・書く)のうち特に「話す」技能が小・中・高等学校問わず重視されるようになったのです。もともと、日本の外国語教育では「話す」ことに対する意識が薄く、主に「読む」「書く」能力の教育に重点が置かれてきました。しかしながら現在の学習指導要領では、英語4技能全ての能力を向上させるべく、中学校より「オールイングリッシュ」にて授業が行われる方針であるなど、「聞く」「話す」能力に対する気運は非常に高まっているのです。
大学入試においてもこの傾向は顕著である一方で、「聞く」「話す」能力を計るための試験方式は各大学の個別試験では限界があることより、各大学が各々の方法で「聞く」「話す」能力を合否判定の材料として評価することは厳しい状況にあります。そこで、私立大学を中心に実用英語技能検定(以下「英検」)やGTECなどの英語外部検定(以下「外検」)のスコアを利用する大学が近年増加の一途をたどっています。外検の利用方法は各大学様々ではありますが、利用している大学の多くが合否判定における重要な材料として取り扱っているのです。また、こうした外検の利用は総合型選抜・学校推薦型選抜・一般選抜問わず実施されており、今や外検でのスコア取得は、受験生にとって志望校合格のための重要なルートの一つとなっていると言っても過言ではないのです。
本稿では、このように近年注目度が上昇している英語外部検定利用入試(以下「外検入試」)について解説を行うことを目的して論を進めてゆきます。また、外検がどのように合否判定へ利用されているのかについて触れるとともに、各大学での外検利用状況についても紹介したいと考えています。
英語外部検定利用入試の概説
(1) 大学入試に利用される英語外部検定
① 外検の種類
まず、外検にはどのような検定試験があるのか、簡単に紹介してゆきます。最も知名度が高く、かつ多くの受験生が利用しているのが英検です。英検は外検利用入試でも採用している大学が多く、外検入試を実施している大学の90%以上が英検を利用している外検なのです。外検入試においての英検は「2級合格」といった合否だけではなく、「CSEスコア」という得点も利用されています。そのため、英検には不合格であっても、CSEスコア次第では各大学の条件を満たす場合もあるので確認が必要です。
さらに英検のほか、外検入試で比較的多くの受験生が利用しているのがGTEC(ジーテック)とTEAP(ティープ)になります。GTECはベネッセコーポレーションが開発・実施をしている検定試験で、大学入試をターゲットとした試験です。CORE・BASIC・ADVANCEDの3つのコースより受験が可能となっており、大学受験を目指すにあたっては、ADVANCEDでの得点が求められ、難易度は概ね英検2級よりやや難しい程度と考えられています。
TEAPは日本英語検定協会と上智大学が共同で開発した「大学入試専用」検定試験になっています。難易度は英検準2級~準1級程度で、高校レベルをやや超えたレベルの問題も出題される試験です。出題傾向は大学入学後を想定した問題で構成されており、受験するには特別な対策が必要となります。なお、開発に携わった上智大学では「TEAP利用型入試」を実施しており、TEAPに限定した外検利用入試を実施しているため、上智大学を目指そうと考えている人は注意が必要と言えます。
このほか、大学入試に利用される外検では、ビジネスにおける英語力を問うTOEICや留学や海外進学を目指す人向けに出題されるTOEFL、そして英語4技能の総合的な活用力を測定して実践的な英語運用力を試すケンブリッジ英検などがあります。このように様々な外検があるだけではなく、大学によって利用できるものも異なるため、受験生は志望する大学の募集要項などをあらかじめ確認し、自分にとって最も有効活用できる外検を受験するようにしてほしいと考えます。
② CEFRとは

ところで、外検では各検定試験で評価方法が異なっているという問題点があります。そこで、外検を利用するにあたっては検定結果をCEFR(セファール)という国際的な指標に基づいてスコアを換算し、統一した評価を行っているのです。CEFRはCommon European Framework of Reference for Language の略で、海外での生活・労働・研究などをするにあたって必要な言語能力の基準を示した国際指標になります。基礎段階(A1~A2)、自立した段階(B1~B2)、熟達した段階(C1~C2)という6段階で言語能力をとらえており、文法、語彙などの知識よりも、言葉を使っていかに行動するかに主眼がおかれています。
英検との対照を見ると、準1級(大学中級程度)のレベルがB2、2級(高校卒業程度)はB1、そして準2級はA2となっています。このことから、大学入試におけるCEFRのレベルは概ねB2~A2が求められていると言えるでしょう。さらに言うならば、一般選抜においては約50%の大学が英検2級レベルを求めている現状があります。つまりは、外検入試を受験するにあたっては目安として英検2級(CEFRのB1)と同等のレベルのスコアを取得しておく必要があるのです。もちろん、大学によって求めるスコアはことなります。場合によっては英検準1級合格に相当するスコアを求められる場合もありますし、英検準2級でもスコアとして認められる場合もあります。事前に各大学の募集要項などを確認することで、自分がどの程度のスコアを取得しておく必要があるのかを調査しておくことを推奨します。
(2) 大学の外検利用方法

続いて、大学入試ではどのように外検が利用されるのかについて紹介してゆきます。上表のように、概ね4方法によって各大学は外検のスコアを利用しています。最も大きい利用方法は「出願資格」と「得点換算」であると考えます。「出願資格」では、大学の指定するスコアを取得していれば個別試験において英語が免除され、その他の教科での点数によって合否判定が行われるのです。また、「得点換算」では大学の指定するスコアを取得しておけば、個別試験での英語の得点にそのまま換算されるという仕組みになっています。要するに、事前に一定以上のスコアを外検で取得しておけば、受験勉強において英語以外の教科に対してのみ対策を行えば良いことになるのです。さらに、個別試験は一発勝負の試験ですが、外検ならば複数回受験のチャンスがあること、そして1つの検定試験で一定以上のスコアを取得することで複数の大学に出願が可能であることも大きな魅力となっています。このように、外検利用入試を活用することによって、受験の選択肢が増えることになるだけではなく、戦術によっては優位になることすら可能なのです。
それでは、以上のことを踏まえて外検を受験する3つのメリットをまとめました。

また、どの外検を受験するか決めかねている受験生、または志望校が定まっていない人については、英検の受験を勧めます。なぜならば、英検は既に書いた通り90%以上の大学が採用をしている検定試験であるためでかつ、最も身近に受験ができるためです。大多数の大学が採用しているがゆえに、外検入試で複数の大学を併願する場合は、最も併願プランを組みやすい検定試験であると言えるでしょう。
おわりに.
本稿では、外検入試について解説するとともに、そのメリットについて紹介して来ました。外検を利用することによって、受験の選択肢が増えることは間違いないことと言えるでしょう。また、外検は総合型選抜から学校推薦型選抜、そして一般選抜まで全ての入試方式において利用されるため、全ての受験生にとって有益なものなのです。これから受験勉強に立ち向かう高校3年生はもちろんのこと、高校1年生・2年生も英検準2級など、まずは取得がしやすい級の取得を考えてはいかがでしょうか。自分の選択肢や可能性を将来的に拡げるためにも、今から積極的にチャレンジしてほしいと考えます。 本稿によって、高校生が外検のスコア取得が大学入試に勝利するための一つの方法であることを知り、外検を受験するきっかけとなれば幸いです。