はじめに.
3月に入り、学年末考査が終わっていよいよ今の学年が終わろうとしています。進路をあまりまだ考えられていない高校2年生(新高校3年生)にとっては、進路を本気で考える良い時期なのではないでしょうか。また、それにともなって受験勉強も本格的にスタートさせてゆかねばなりません。比較的に勉強時間が確保できる、学年末終了後から春休みまでの期間でいかに勉強する習慣を身に付けておくのかが、進級後の受験勉強の内容にも大きく関わってきます。是非、自分の進路について考えてみるとともに、受験勉強を本格的に始めるきっかけの期間にすることを推奨します。
さて、進路について本格的に考えるにあたってのきっかけにならないかと、本稿では総合型選抜と学校推薦型選抜の入試方式について紹介したいと考え、筆をとりました。現在、総合型選抜や学校推薦型選抜は国立私立問わず定員枠を拡げる傾向が続いており、なんと私立大学進学者の半数以上は総合型選抜や学校推薦型選抜で合格を決めているのです。
そのため、総合型選抜や学校推薦型選抜を活用した大学受験も十分に活用すべき方法なのです。本稿を読むことによって、高校生の皆さんが総合型選抜や学校推薦型選抜の入試方式等を知り、進路選択を考えるにあたっての参考になれば幸いです。
総合型選抜・学校推薦型選抜
(1) 総合型選抜について
① 総合型選抜の概要
総合型選抜とは、エントリーシートなどの受験生からの提出書類のほか、面接や小論文、プレゼンテーションなどが課され、受験生の能力・適性や学習に対する意欲などについて時間をかけ、総合的に評価する入試方式です。
他の入試方式と比べると、「高い学習意欲」「学びへの明確な目的意識」が選抜基準として重んじられているため、選抜方法もその点が判断できるような内容となっています。また、総合型選抜では他の選抜方法よりも、志望理由書や事前課題など、出願時に受験生自身が作成して提出する書類が多いことも特徴となります。そのため、総合型選抜は「出願時から試験が始まっている」と考えてください。このことから、総合型選抜を受験する際は、出願前からしっかりと提出物を完成させなければならないのです。
なお、総合型選抜は学校推薦型選抜や一般選抜よりも早期に出願・試験・合格発表が行われるため、少なくとも夏休み終了時には志望校を決定しておく必要があります。また、総合型選抜は、他の大学との併願ができない「専願制」の方式がとられている場合が多く、「出願校=第1志望校」となることが原則のため、安易な進路選択ではなく自分の進路・適性をしっかりと考えたうえで受験しなければなりません。
② 総合型選抜の実施パターン
総合型選抜では、特に私立大学において選抜方法が様々な方式に富んでいて、同じ総合型選抜という名前でも、選抜方法が大学によって大きく異なっています。特に難関私立大学では、1次選考と2次選考に分かれることが多く、「1次:書類審査、2次:小論文・面接」というパターンが一般的になっています。さらにセミナーやスクーリングの実施、プレゼンテーション・グループディスカッションなどを組み合わせ、時間をかけた選抜方法が導入されています。また、難関私立大学の総合型選抜においては書類審査の基準が厳しく、出願者の多くが1次選考で不合格となる場合が多い大学もあります。このように、出願要件も全体的に厳しく、合格するためには学力や傑出した能力が重視される、やや狭き門な方式であると考えてください。
その一方で、難関私立大学以外の大学では、対話型や実技・体験型の総合型選抜が一般的な形式となっています。もちろんこれらの方式も簡単なものではありませんが、選抜型の入試方式と比較すればハードルは低いと考えて良いでしょう。しかしながら、対話型や実技・体験型ではオープンキャンパスへの参加が必須であったり、事前面談への参加が義務付けられたりと、出願前から大学の開催するイベントに参加しておく必要があります。このことから、少なくとも夏休み前には第一志望としてピックアップしておかなければなりません。つまり、これらのタイプの総合型選抜は大学・学部への適性や学ぶ意欲がより一層重視されていると言ってよいでしょう。
以下の表に、総合型選抜の入試方式について簡単にまとめましたので、ご確認ください。

③ 国公立大学の総合型選抜
総合型選抜は国公立大学でも実施されており、選考日程は出願が9~10月、合格発表11~12月上旬といった入試日程が一般的となっています。出願条件は、「学習成績の状況」の成績基準が課されない場合や、高卒生でも出願できるなど、学校推薦型選抜より緩やかな場合が多いですが、一方で大学によっては「『英語検定○級取得』などの有資格者」「全国コンテストの上位入賞者」といった条件が加わっていることもあるので注意が必要です。
選考方法は、難関私立大学の総合型選抜と似ており、「1次:書類審査、2次:面接(プレゼンテーションも含む)・小論文」といった選抜型タイプが一般的で、加えてセミナーやスクーリングなどに出席してレポートを提出させるといったパターンもあります。また、国公立大学の場合は基礎学力を測るために、共通テストを課す大学も増加傾向にある点も注目点です。
(2) 学校推薦型選抜について
① 学校推薦型選抜の概要
学校推薦型選抜が総合型選抜や一般選抜と大きく異なっている点は、学校推薦型選抜では出身高校長の推薦を受けないと出願できない、という出願要件が厳しい点にあります。出願にあたっては、「調査書の学習成績の状況◯以上」「◯浪まで」といった出願条件が設定されている場合があり、これらの出願条件をクリアしていなければ、出願することはできません。評定平均値とは高校の成績の平均値のことで、高校 3 年間(高1から高3の1学期)までのすべての教科・科目の成績(1~5の5段階)の合計値を、すべての科目数で割った数値(小数点以下第2位で四捨五入)で求めることができます。「評定平均値4.2以上」などと、大学から出願条件が指定されるため、高1・高2生で学校推薦型選抜の受験を考えているならば、普段の考査対策からしっかりと取り組まなければならないのです。
また、学校推薦型選抜には「指定校推薦」と「公募制推薦」という2つの種類があります。指定校推薦は主に私立大学で実施されており、大学が指定した高校からしか出願できない制度です。出願枠は各高校に数名ずつしか割り振られず、人気の大学の場合は高校内で選考を行って推薦者が決定されます。大学がその高校を信頼して出願枠を設けている試験なので、高校内の選考さえ通過することができれば、入試での合格率はかなり高い方式なので、指定校推薦を希望する生徒は入学時から定期考査に対してしっかりと取り組んでいる場合がほとんどです。
一方の公募制推薦は指定校推薦と異なり、大学の求める条件を満たしていれば、どの高校の生徒も出願できる制度で、多くの大学で実施されている方式です。当然、出願条件さえクリアしていればどの生徒も出願できる制度であるため、指定校制に比べると合格の難度はやや高めとなっています。なお、学校推薦型選抜は総合型選抜と同様に多くの大学において、他大学との併願が認められない「専願制」の場合が多い点に注意が必要です(近年は、他大学との併願が可能な併願制も増加傾向にありますが)。

② 国公立大学の学校推薦型選抜
国公立大学では、全体の9割以上の大学が学校推薦型選抜を実施しています。ただし、国公立大学の学校推薦型選抜は私立大学に比べて募集人員が少なく、出願条件のうち「学習成績の状況4.0以上」など厳しい成績基準を設けている大学があるほか、高校からの推薦人数が制限される場合もあり、出願前に学内で選抜が行われるケースも少なくありません。また、国公立大学の場合は、共通テストを課す場合と課さない場合の2タイプに大別され、その入試日程も大きく異なっているものとなります。
選考方式では、小論文など受験者自らの考えに基づき論を立てて記述させる評価方法のほか、プレゼンテーション・口頭試問・実技・個別学科試験、そして資格・検定試験の成績や共通テストなど、学力を確認する評価を実施することが必須となったため、国公立大学では共通テストを課す大学が多くなっています。また「面接」「小論文」を課す大学が多く、口頭試問を含んだ面接や学科に関連した専門的知識を要する小論文が課されることも珍しくないため、受験にあたっては学力のみならず事前の準備にも相当な労力が必要となっているのです。
③ 私立大学の学校推薦型選抜
私立大学の出願要件は国公立大学ほど厳しくなく、基本的に出願要件に成績基準を設けている場合が主ですが、一部の大学では設けていない場合もあります。選抜方法は、小論文や適性検査・面接・基礎学力試験・調査書等の書類審査など、さまざまな要素を組み合わせて選考されています。近年は適性検査や基礎学力検査といった名目で学力を測る試験が行われている大学も散見される状況です。
おわりに.
本稿では、総合型選抜と学校推薦型選抜について、その入試方式の詳細を説明してまいりました。この2つの入試方式の共通点は「①大学によって入試内容が様々であること、②学力以外も評価され事前の準備が重要である」ことではないでしょうか。つまりは、総合型選抜や学校推薦型選抜で大学合格を目指すのであれば、早いうちから自分の進路について考え、第一志望となる大学を決定しその大学の入試に必要なものを理解しておかなければならないのです。
何事も早いに越したことはありません。早くから自分の進路について真剣に考え、しっかりとした準備をして入試を迎えられるように今すぐ動き出しましょう!これから受験生になる新高校3年生だけではなく、新高校2年生や新高校1年生にも同じことが言えると考えます。