【11月 教育支援通信】
つづける習慣

 皆さんは、目標を立てて、その目標が3日坊主で終わってしまった経験はありませんか?新しく設定した目標は習慣化されていますか?

 続けることは、大人でも難しいものです。昼間は学校へ通い、その後は部活動や習い事、何もない日はほとんど無く、忙しい毎日を皆さんは送っていると思います。習い事・受験勉強・読書・日記をつける等、何事にもレベルアップするには、「続ける力」が欠かせません。

 目の前の困難を乗り越えてひとつのことを続けることによって、人間は強くなり、人に勇気を与えることができるようになります。皆さんも目標を設定して、「続ける」ということを習慣化してみませんか?

習慣化とは

【歯磨きのように楽に続く、それが「習慣化」】

 自分が続けたいと思っていることを、意思や根性に頼らず、毎日の歯磨きのように楽々続く状態に導くこと。つまり、行動が自動的に継続されている状態を保つのが「習慣化」です。みなさんの中で、(習慣化されていれば)毎日歯磨きを続けるのに苦痛を感じるという人はいないでしょう。これは歯磨きに限ったことではないのです。 

運動、勉強、片付け、食事制限、節約、日記、早寝早起きなども習慣化してしまえば、全てストレスなく自然に続けることができるのです。私たちは、知らず知らずのうちに、いくつもの習慣を身につけています。

◎ある中学生の1日のスケジュール◎

7:00 起床
7:10 朝食
7:40 歯磨き
7:50 家を出る
8:15 登校
18:30 帰宅
18:45~ 自由時間(夕食)&習い事
21:30 お風呂
22:00~ 自由時間
23:30 就寝
もちろん、日によって多少の違いはあるでしょうが、例に挙げた彼はおおむね毎日、これらの「習慣化」されたパターンで1日を過ごしているのです。

【脳は自然に「習慣化」している】

 なぜ人は習慣化するのでしょうか?
 理由は、私たちが意識して行えることには限界があるからです。

 ご存知の通り、人には意識と無意識があります。私たちの意識は一度に1つのことしかできません。たとえば、英語の勉強をしながら、数学の勉強は同時にできませんし、授業に真剣に取り組みながら、夏休みの計画はできません。 一方、自転車に乗りながら考え事をしたり、箸を動かしながらテレビを見ることはできます。これらの動作はひとつひとつを特に意識しなくても、手足が動く順番を覚えているからです。

 以上を踏まえると、習慣は繰り返される行動を無意識化(自動化)したものと説明できます。繰り返しの行動には意識を向けるのをやめ、無意識の自動化状態にしたのが習慣というわけです。習慣は、脳に作られたプログラムなのです。朝起きる時間から通学ルート、給食の時間まで、脳が毎日すべてを計画していては、それだけで1日が終わり、その他のことは何もできません。そこで、脳は一定期間繰り返し行われた行動は、無意識のうちに繰り返すことができるよう、脳内にプログラムを作り上げます。それが習慣の正体なのです。

 ここで大切なのは、脳にとってよい習慣、悪い習慣の区別はないということです。脳からすると、ただ一定期間以上繰り返されたから習慣化しただけ。よい習慣でも、悪い習慣でも身についてしまいます。逆にそれさえ気を付ければ「習慣化」は自動的に行動を継続してくれる素晴らしいプログラムであり、より少ない努力で望む結果を手に入れることができる「魔法の杖」でもあるわけです。

 習慣に支配されるのか、それとも習慣を上手に使いこなすのか、私たちは選ぶことができます。そして、習慣を味方につければ、勉強で結果が出たり、人間関係をよくしたり、健康を手に入れたり、社会に貢献するなど、豊かな人生を手に入れることができるのです。

なぜ習慣化できないのか?

人間には「新しい変化に抵抗し、いつも通りを維持しようとする傾向」があるからです。体温を例にとりましょう。私の平熱は36.5度ですが、このように体は普段、平熱といういつも通りの状態を維持しています。気温が高い40度の真夏であれ0度になる真冬であれ、環境変化に流されず平熱を維持しようとするのです。また、風邪で発熱をした時も、汗を出して必死に体を冷やし体温を下げてくれます。常に、頑張って平熱に戻そうとするわけです。

 もう1つ、性格を例にとりましょう。あなたはどんな性格ですか?その性格がどんどん変化したらどうなるでしょうか?たとえば、朝にとても社交的な人と会えば、その影響で社交的な性格になる。次に会った人が心配性なら、その悩みを聞いている自分も心配性になる。あるいは、強気な人と一緒にいるうちに、自分も強気な性格に変化してしまうとしたら、どうでしょう?身体であれ、心であれ、いつも通りを維持してなければ、変化の波に振り回されてしまいます。人間にとって、いつも通りは心地よく、変化は脅威なのです

 これと同じことが、習慣化のプロセスにも言えます。新しい習慣を身につけるという変化を、脅威に感じるからこそ多くの人が3日坊主に終わり、コツコツ続けられずに挫折すると考えられます。その動きを、ここでは「習慣引力」と呼びます。

≪習慣引力≫

① 新しい変化に抵抗する

 良い習慣を身につけることも、変化は変化です。ですから、新しい習慣を身につけようとすると、それに流されないように抵抗を始めます。これが3日坊主を生むメカニズムで「習慣化」が困難な原因なのです。人間にとっては、むしろ途中で挫折する方が正常と言っても良いくらいなのです。

② いつも通りを維持する

 一度脳がいつも通りを認識したら、今度は維持しようと頑張るのも習慣引力の機能です。悪い習慣がなかなかやめられないのは、脳が「いつも通り」のことと認識してしまっているからです。一方、よい習慣も一度「いつも通り」と認識されれば、簡単に維持できます。よって習慣にするためには、脳が新しい習慣を「いつも通り」と認識できるまで続けることです。これが、人の心理にかなった方法なのです。

これでうまくいく「続ける」習慣3ステップ

ステップごとに異なる対策が必要です。その対策以前の前提として、以下の2つを念頭に進めてください。

前提1 毎日行動し続ける

 30日間毎日、習慣化したい行動を続けてください。たとえハードルを低くしても、毎日行うことが習慣のリズムを身体に浸透させ、かつ挫折率も低く抑えることにつながります

前提2  対策も最後まで続ける

 3つのステップでそれぞれ行う対策はすべて、30日間継続することが前提です。例えば、反発期に行う「ベビーステップ」や「記録」は、その後の不安定期、倦怠期でも実施してください。不安定期に行う「パターン化」「例外ルール」「継続スイッチ」も同様です。
 これらの前提を踏まえたうえで、表にある対策を、各ステップごとに1つ1つこなしていきましょう。

継続スイッチとは

 不安定期に出ていた、「継続スイッチ」についても触れておきましょう。不安定期、あるいは倦怠期で挫折するのを防ぐためにも、あなたの継続のツボに合うスイッチを、探してみてください。

① アメ系スイッチ

憧れ、楽しさ、褒められる、ご褒美といったアメで自分を動かしていくスイッチです。

スイッチ1
ご褒美【ご褒美パワーで目先の困難を乗り越える】
スイッチ2
褒められ上手【褒められる環境を作り、やる気を上げる】
スイッチ3
遊び心【遊び心で行動を楽しくし、自分のテンションを上げる】
スイッチ4
理想モデル【理想のモデルを設定し、今の自分を一段レベルアップさせる】
スイッチ5
儀式【小さな儀式を行うことで、だるくて辛い気持ちを吹き飛ばす】
スイッチ6
悪魔払い【行動を邪魔する障害を取り除き、ストレスを軽くする】

② ムチ系スイッチ

締切、宣言、約束、罰を避けたいといった危機感で自分を動かしていくスイッチです。

スイッチ7
損得感情【お金を投資し、挫折すると損する環境を整える】
スイッチ8
習慣ともだち【習慣ともだちを作ることで甘えを許さない】
スイッチ9
みんなに宣言【みんなに宣言し、あとに引けない状態を作る】
スイッチ10
罰ゲーム【罰ゲームで、日々の辛さ・言い訳・甘えを撃退する】
スイッチ11
目標設定【目標を設定して達成意欲を引き出す】
スイッチ12
強制力【約束、環境、時間制限により、やるしかない状況に追い込む】

今すぐ習慣の種をまこう

人は習慣によってつくられる。優れた結果は、一時的な行動ではなく習慣からうまれる

  これは、アリストテレスの言葉です。私たちは習慣の生き物であり、良い習慣を備えることで人生はうまく回りだします。良い習慣を身につけることにこそ、勉強とこれから先の将来の成功、人生を豊かにします。これは遠回りのようで、もっとも近道なのだと思います。
 しかし、現実的には続けることはなかなか難しいものです。それを私たちは、「飽きっぽいから」「意志が弱いから」と言い訳をしますが、続かないのは性格や意思の問題ではなく、コツや原則を抑えていないからだというのが、今回みなさんにお伝えしたいことです。
 物事を続けるときに、意思や根性で継続するのではなく、人に備わった「習慣」という自動行動プログラム作動させることができれば、もっと自然に、もっと当たり前に、ほとんど苦痛なく続けることができます。これを読んだ皆さん、一度試しにやってみてください。1か月後には設定した目標が、習慣化していますよ!