【12月 教育支援通信】
「勉強は将来何の役にも立たない」と考えている子どもへの話し方

はじめに.

 子どもが必ず一回は疑問に思うこと。それは「今やっている勉強って、自分にとって将来何の役にも立たないのではないか?」ということです。

今月の教育支援通信では、子どもからそのような疑問をぶつけられたときに、保護者の皆様のお役に立てるような内容をお伝えできればと思います。是非ご一読ください。

ダメな答え方

 その質問に対して、大人は「受験を乗り切るために勉強ってのは必要なんだ!」「いい学校に行くためなんだよ!」と短絡的に答えがちです。これらは、勉強は「進学のためのツール(道具・手段)なんだ」という回答に過ぎません。実際に子どもの「将来何の役にも立たない」という意見を肯定している回答でもあります。

 なので、ただ「そういうものなんだ」と割り切らせるだけで、腑に落ちた解答にはならないのです。子どもによっては勉学への向上心を大いに削いでしまう場合があります。 

望ましい答え方

 今学んでいる知識は、すべて自分にとっての「血となり肉になっている」という実感を与えられる答え方にしなければなりません。「今学んでいることは、将来、すべて役に立つ」ということを伝えなければならないのです。
 それを踏まえた3つの回答例をご紹介します。

答え方① 「より専門的な勉強」をするために必要な土台知識を学んでいるんだよ

 将来「何になる」にしても、今やっていることより難しい勉強をしないといけないというのは何となくわかるよね。たとえば、プログラマーになるにしてもプログラミングの勉強をしなければならない。パイロットになりたいとしてもそのための様々な方法を学ばなければならない。また、何か資格を必要とする仕事につこうとしても、そのための勉強をしなければならない。

 つまり、何か「人から認められる仕事」をやりたいと考えているのなら、今やっていることより高度な勉強を乗り越えなければならないんだ。

 その高度な勉強をするときに「基礎学力・教養」ってのが絶対的に重要なのです。それがないと、その高度な勉強を理解するのに10倍時間がかかります。中学生までに学ぶ内容というものは、高い知性・知能を獲得するための最低限の土台なのです。

 今は、土台のレンガを積んでいる最中だと考えよう。レンガ一個一個を見たら「意味ない」と感じるかもしれないけど、強くどっしりした土台をつくるために一つも無駄にしてはいけないよ。

 土台がないと10倍時間がかかると言ったね。大人になってからの10倍の時間というものは、とんでもない負担だということも付け加えておくよ。 今できる土台作りをしっかり頑張ろう!

答え方② 「生きる力」を身につけるために勉強するんだよ。

「生きる力」って何か?

細かく見たら多種多様な能力があってキリがないけど、最大公約数的に大きく一つにまとめると「問題を解決する力(問題解決能力)」が「生きる力」そのものともいえるね。人生って問題の連続です。「人生 = 問題の出現と解決の繰り返し」なんだよ。その問題を一つ一つ解決していくことで、自分の境涯(立場)を高めていくことが出来るのです。

今、君が頑張っている勉強や部活はすべて「生きる力」につながる

 勉強は知識を、部活は経験を君に与えてくれる。その知識や経験は一滴の水滴となって「問題解決能力」の泉に注がれているのです。その泉が深ければ深いほど、君の問題解決能力(生きる力)は高まるのです。君はその泉を見ないで、一滴の水滴を見て「意味がない」と考えてしまっています

 一滴一滴の水滴が集まって深い泉が出来上がるのですから、一滴一滴すべてが大切で意味があります。学生時代に一生懸命勉学に励めば、大人になったときに素晴らしく深い知識の泉が出来上がっていることでしょう。その深い知識の泉に蓄えられたモノが、問題解決の様々な場面・議論・意思疎通その他諸々の助けになるのです。

 一つ注意点があります。その「知識の泉」を構成する知識には種類があります。
それは「学業によって身につける知識」と、「経験に裏づけされた知識」です。いわゆる「がり勉クン」といって馬鹿にされる類の人たちは、学業によって身につける知識に偏っている人たちのことです。もちろん、経験の充実により満たされる知識に偏るのも良くありません。人間が一生の間でその身で経験できることはせいぜい限られているのですから。

知識と経験がブレンドされた泉が必要なのです。

わかりやすく極端な例を出しますが、あなたは高校3年生と小学1年生だったらどちらに大事な仕事を託しますか?答えるまでもないでしょう。でも人間の脳は6歳までにほぼ完成します。脳の作り的には大差がなくても、高校3年生を選ぶのはなぜでしょう。それは高校3年生の方が「深い知識の泉」を持っているから問題解決能力に優れているのがほぼ間違いないからです。

極端な例と言いましたが、学びを続けてきた大人と、そうでない大人の知識の泉はそれ以上の差が生じることも多々あります。学びを止めてはいけません。学びの意味を疑ってはいけません。必ずあなたの血となり肉となります。

さぁ、人生の難題に対して、深く思考できる大人になろう。そして解決できる大人になろう。そのための知識の泉を一滴ずつしっかり形成していこう!

答え方③ スポーツと一緒。「やってる人とやってない人の差って大人になると歴然なんだよ。」

単純にスポーツと一緒だよ

体鍛えている奴とそうでない奴の差って、特に大人になると信じられないくらいの差が生じるんだよ。

頭の回転もそう

鍛えてきた奴とそうでない奴の差はとんでもないよ。

またスポーツに話を戻すけど「高校生のときの身体能力」がそれから先の長い人生の身体能力のデフォルト値(基本値)になるって知っているかい。つまり、高校生のときにまったく運動できなかった人は、大人になってからどんなに努力しても基本値が低いからそれほど成長しないって残酷な現実があるんだよ。

頭もそうなんだよ。頭が良くなりたいのなら今頑張るしかないんだよ。今鍛えるしかないんだよ。 そういう意味で、中学・高校時代ってのは人生で一番大切な時代なんだと言えるんだよ。

おわりに.

回答例を3つほど掲載しましたが、どれが心に響くかどうかは子どもごとに異なります。

3つの回答に共通しているのは「今行っている勉学は土台作りで、すべて人生の役に立つ」ということです。

「役に立たないその場しのぎのもの」という考えでは、真の学びは身につきませんし、モチベーションも継続しません。あくまでも「今学んでいる知識はすべて役に立つ」という姿勢は貫きましょう。

子どもと、このような議題について話せるときは、ステップアップさせる大チャンスです。真剣に向き合って、子どもと意見をぶつけ合ってください。

 そのときに、この記事が少しでもお役に立てれば幸いでございます。