【2月 大学受験通信 】
~2021年度入試トピック~

はじめに.

 2021年もあっという間に2月に入り、大学受験は一般選抜の私立個別試験が本格化している。月末には国公立大学の2次試験も控えており、受験生にとっては集大成となる1か月間となるだろう。志望校合格に向け、最後のひと踏ん張りの時期である。どうか頑張ってほしい。

 さて、初めての大学入学共通テスト(以下「共通テスト」)の実施や新型コロナウイルス感染拡大問題(以下「コロナ禍」)による入試方式の変更などによって、例年よりも大学入試に関する報道が増加傾向であると感じているのは筆者だけではないだろう。受験生である高校3年生はもちろんだが、来年度以降に大学入試を控える高校2年生・1年生も大学入試という言葉に触れる回数が多いのではないかと推察する。特に、高校2年生にとってはちょうど1年後、大学入試の一般選抜を戦うことになる。大学入試を1年後に控え、目標となる志望校を定めたい時期である。2022年の4月に、自分がどの大学の校門をくぐることになるのか、是非想像できるようになってほしい。

 本稿では、「2021年度大学入試トピック」をテーマとして、主に初めて実施された大学入学共通テストについて、特に平均点に着目して分析・考察を試みたい。共通テストの平均点が発表されたことによって、様々な事項を読み取ることができる。そのため、共通テストが実施された結果、2021年度の受験生にどのような影響・結果をもたらせるのかを考えてゆく。また、2021年度入試はコロナ禍という極めて特殊な状況のもとで大学入試が実施されている。コロナ禍によって、2021年度の大学入試は大きく影響を受けてしまった。今後、終息の兆しが見えないコロナ禍の中で、大学入試はどのようにして実施されてゆくのか。来年度入試への参考も兼ねて考えてゆきたい。

※本稿は2021年1月25日段階での情報をもとに執筆している。特に、コロナ禍の影響による最新の情報に留意されたい。

2021年度大学入試トピック

(1)初めての共通テストを実施

 1月16日(土)・17(日)に共通テストの本試験が終了した。目玉とされた記述式問題の出題や英語外部検定試験の利用が中止されるなど、様々な議論が行われた共通テストであるが、大きな問題が起きることなく無事に第1回の試験を終了することができた。

 さて、共通テストにおいて最も予想されてきた事項は、前身のセンター試験から共通テストへ移行するにあたって難化が予想されることにともなって、平均点が低下するだろうと考えられていた点である。センター試験とは異なり、共通テストは知識だけでは正答できない「思考力・判断力」を問う問題が出題されることが決定していた。そのため、英語(リーディング)や数学Ⅰ・Aの試験などでは文章量が多く、受験生が時間内に全問解答することが厳しいのではないかと考えられていたのである。実際に、初めての共通テストを終えて平均点はどのように変化したのだろうか。そして、このような結果になった理由はどのようなものと考えられるのか。共通テストについて考察を試みたい。

① 共通テストの平均点を考える

 1月22日に大学入試センターが発表した共通テストの中間集計結果では、平均点の低下が予想された英語(リーディング)で58.81点(前年差+0.66点)、数学Ⅰ・Aで57.68点(前年差+5.8点)と発表されるなと、予想とは反する結果となっている。また、数学Ⅱ・Bでは59.93点(前年差+10.9点)、生物で72.65点(前年差+15.09点)などと、前年と比較して平均点を大きく上回る科目も出ているのである。では、このような結果となった要因はいったい何なのだろうか。

 考えられる大きな要因は2つほどある。一つ目は、受験生の対策が周到であったことだ。今回、初めて実施される共通テストだっただけに、受験生が普段以上に共通テストに対する対策を十分に講じてきたことが考えられる。また、コロナ禍によって個別試験が中止されるなどの事態を想定して、確実に共通テストで得点できるよう、共通テストに照準を合わせて臨んだ受験生も多いはずだ。実際に例を挙げると、東洋大学は2020年9月の段階でコロナ禍によって個別入試が実施できないような事態に陥った場合、共通テストの結果のみで合否判定を出す可能性があるという発表をしている。こうした情報などを踏まえて、共通テストで得点できるよう対策した受験生が少なくないことは想像に難くない。

 二点目は、コロナ禍によって共通テストを「記念受験」する受験生が少なかったことが考えられる。共通テストの出願期間は、2020年9月28日~10月8日であった。2021年度大学入試により総合型選抜(旧AO入試)の出願が11月以降になったことなどや、コロナ禍によって大学受験の先行きが不透明な部分が多かったことから、「とりあえず」共通テストに出願した受験生も少なくない。こうした受験生が12月までに合格通知を受けとったため、共通テストの受験を控えたケースが今回は特に多いのではないだろうか。平時ならば「せっかく受験料を支払ったのだから、受けるだけ受けよう」という受験生が、コロナウイルス感染のリスクを抑えるために受験を避けた事例は少なくないだろう。

 要するに、「本当に共通テストの受験が必要な受験生」の割合が大きかったため、平均点の上昇につながったという考えである。やや筆者の想像的なものであることは否めない。しかしながら、コロナ禍を懸念して共通テストの受験を控えた受験生がいることは、間違いないだろう。 では続いて、平均点などから読み取れる受験生の動向について、考えてゆく。

② 出願先の二極化

 このように、予想を反してほぼ昨年度のセンター試験と同様の平均点となった共通テストであるが、二つの「二極化」が考えられている。一つ目の二極化は、出願先の二極化である。大手予備校の調査などによると、共通テストの結果を踏まえて難関国公立大学への志望者数が増加傾向にあるという。これは、共通テストで結果を残した受験生が多く、強気に出ているものと分析されている。この背景には、共通テストの平均点が予想以上に下がらなかったことと、共通テスト開始によって「安全志向」の受験生が減ったことが考えられる。共通テストが開始されることを受けて、ここ数年は浪人を避ける志望校の「安全志向」傾向が顕著であり、受験生は確実に合格できる大学へ出願する流れが如実に表れた。しかしながら、共通テストが実際に始まったことによって、共通テストに対する「先行き」が明らかになり、浪人を恐れず「本当の第1志望」大学へ出願する受験生が増加するものと予想できる。

 一方で、コロナ禍による「安全志向」も見られている。というのは、主に地方在住の受験生はコロナ禍の終息に目途が立たないことなどから、都市圏の大学への進学を避けて地元の国公立大学を志望する傾向も見られているようだ。平均点が予想以上に高かったことから、共通テストの自己採点結果が思うような結果ではなかった地方在住の受験生は、無理をせずに安全志向へ傾いていると分析されている。このように、共通テストの結果を踏まえて「強気」に出る受験生と、コロナ禍の影響などによって「安全志向」となる受験生で二極化する傾向が見られているのだ。

③ 試験結果の二極化

 二つ目の二極化は、試験結果の二極化である。先述の通り、難関国公立大学への志願者が増加傾向にあることから、共通テストで高得点であった受験生が多数いたことは間違いないだろう。一方で、問題の文章量が増えたことに加えて「思考力・判断力」を問う問題が多数出題された。こうした問題形式に対応するため、受験生は時間配分を意識した問題演習を十分に行う必要があるほか、従来のセンター試験対策とは異なる暗記や公式を当てはめるといったテクニックだけでは正答を導くことができない「思考力・判断力」に対応するための訓練が、共通テストで高得点を取るためには必要不可欠だったのだ。そのため、早い時期に知識のインプットを完了し、共通テストに向けた対策時間を確保できた受験生は結果を出すことができ、共通テストに向けた対策を確保できなかった受験生にとっては厳しい結果となったものと考えられる。

 要するに、共通テストは受験するにあたってはセンター試験以上に、十分な「共通テスト対策」時間を確保する必要がある試験なのである。恐らく、今回の共通テストの問題傾向が来年度以降の共通テストのスタンダードになるものと考えられる。ゆえに、この結果を踏まえ、受験生となる現在の高校2年生は早くから受験勉強をスタートし、共通テストへの対策時間も十分に確保できるような学習計画を立てねばならないことがいえる。

(2)コロナ禍における大学入試

 共通テストが終わった中、コロナ禍の影響によって、国公立大学を中心に個別試験の方式を変更する動きが出ている。横浜国立大学が早々と2次試験を中止として、共通テストの結果のみで合格判定を出す決定をしたことは非常に衝撃的な発表であった。さらに2021年に入り、再度の緊急事態宣言が発令されたことを受け、共通テスト終了後にも関わらず2次試験の中止または中止の可能性があることを発表した大学が出ている。

 電気通信大学と宇都宮大学は、横浜国立大学同様に、2次試験の中止を決定して共通テストのスコアのみで合格判定を出すという発表をした。また、信州大学の人文学部と経法学部、および広島大学においても、今後のコロナ禍状況によっては2次試験を中止する可能性がある旨を発表している。このような状況から、コロナ禍を理由とした個別試験の方式変更等は来年度以降の入試にも影響を与えかねない危機的状況であるといえよう。

 本稿が読者の目に届くころに、個別試験の実施状況がどのようになっているかは想像できないが、コロナ禍によって大学入試が大きな影響を受けていることは疑いようのない事実である。ワクチンの接種が開始される見込みが立ったとはいえ、コロナ禍が完全に収束する様相はまだ見ることができない。来年度の入試に向け、高校2年生・1年生も今後文部科学省からの発表をはじめ各大学から発表される情報に対しては常に留意しなければならないだろう。