【12月 大学受験通信 】
~学問研究ガイダンス~

はじめに.

 大学受験を考えるにあたっては、志望大学を決定することはもちろんだが、進学先で「何を学ぶのか」を具体的に考えることも非常に重要である。なぜならば、大学は研究機関であり、高校までのような5教科を幅広く学ぶというよりも、特定の分野に対する専門性を深める学びへと変容するためである。ゆえに、進学した学部・学科によって学ぶ内容は大きく異なり、進路決定にあたっては事前の学部・学科研究が必須なのである。

 しかしながら、大学で学ぶことが出来る学問は多岐に渡っており、「自分が何を学びたいのか(どの職業に就きたいのか)がわからない」という生徒も多いのではないかと推察する。また、ある程度志望する就職先や学びたい学問分野があったとしても、細かく分野が分かれているため、どの学部・学科を選択すればよいのかを絞ることが出来ない場合も考えられる。そこで本稿では、具体的に相違点を判断しかねる学部・学科についての解説と、近年関心の高まっている一方でどのような事柄が学べるのか具体的なイメージがしにくい「国際関係学」についての紹介をしてゆきたい。

 志望する学部・学科を決定することは、すなわち自身の受験科目決定にも一定の目途が立つものであるため、早期の決定によってよりスムーズに受験勉強をスタートすることが可能となる。ゆえに、志望校だけではなく、具体的な学部・学科までを定めることによって、明確な目的意識をもって受験勉強に勤しむことが出来るのだ。 本稿の内容が、これから志望校を決定するものであろう高校1・2年生、および併願先の最終調整を行う高校3年生にとって有益な情報となることを願う次第である。

学部・学科を知ろう!

(1) 「似て非なるもの?」学部・学科の違い

 先述の通り、志望校を決めるにあたっては、進学する学部・学科も考えなければならない。ある程度、大学卒業後の進路に希望がある生徒は問題ないだろうが、まだ将来の希望進路が定まらない生徒も大勢いるものと推察する。しかしながら、文系・理系を問わず学部・学科は多くの種類が存在しており、具体的にどのような学問を学ぶのか判断しかねる場合も多い。そこで、本稿では特に生徒からの質問が多い、文系の「経済・経営・商学部」と理系「理・工学部」それぞれの違いについて解説してゆきたい。さらに、各々の分野においてどのようなことが学べるのかに関しても紹介する。

① 経済・経営・商学の違いとは

 まずは、文系の生徒で最も質問が多い経済・経営・商学の違いを解説してゆく。これらの学系は主にお金に関係した事柄を研究する学問である点が共通点と言えるだろう。では、これら3学系の異なるのはどのような点であろうか。以下にまとめてみた。

 上表より、これら3学系は「経済学」「経営・商学」に大別される。経済学は世の中のお金の流れに関する理論を学ぶ学問である一方、経営・商学は企業の運営方法や利潤の創出方法を研究する実学(社会生活に実際に役立つ学問のこと)を中心とした学問となる。経営・商学は研究内容が重複する分野が多く厳密に分類することは難しいが、組織運営全般(「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」)を総括して研究してゆくのが経営学であるといえよう。そして、商品・サービスとお金の流れの関係や企業の財務会計など、ややお金に特化して研究してゆくのが商学といえる。いわば、商学は経営学の一分野であると考えることも出来るだろう。

 このように、経済・経営・商学の3学系は「似て非なるもの」であり、重複している分野が存在しつつもそれぞれの学系で、深めて研究する内容は異なっていることは疑いようのない事実である。これら3学系に興味をもつ生徒がいれば、本稿を参考にしてどの内容を一番学びたいのかを検討してほしい。なお、これら3学系に関する学部・学科に進学した場合の大学卒業先の進路には、大きな差異はない。ゆえに、これら3学系で学部・学科を迷ったならば、最も興味をもった学系に進むことを提唱したい。

② 理学・工学の違いとは

 続いて、理系の生徒からの質問が多い理・工学の違いについて解説してゆきたい。これら2学系は理系学部への進学を志望する生徒の多くが選択すると推察される学系である。早速、以下に違いをまとめてみた。

 上表より、理学と工学の最も異なる点は、理学が「科学者(サイエンティスト)を養成する学問」であり、工学が「技術者(エンジニア)を養成する学問」であることである。理学と工学では重複して学ぶ学問・分野も多いことから、志望する職種によって学部・学科を選択することが望ましいであろう。ゆえに、自然科学それぞれの学問を純粋に探究してゆきたい生徒は理学部を、そして理学を応用して新たな技術開発することに興味・関心を持つ生徒は工学部を志望することを提唱したい。工学のほかにも、理学を応用する学問には、医学・薬学・農学などもあり、これらを総称して「応用科学」と呼ばれている。

ところで、理学・工学は上表の通り多数の分野があり、大学によって扱う分野は様々である。受験を希望する大学に、自分の学びたい分野の研究室はあるのか、またその大学ではどのような内容の研究に力を入れているのか、大学によって研究できる専門分野は大きく異なる場合もある。ゆえに、既に自分が学びたい分野が決まっている生徒は、学部・学科の名前だけで志望校を決めるのではなく、実際に大学案内やホームページを検索するなどの手法を用いて、事前に大学で学べる分野について研究しておくことを薦めたい

 それでは、下表に工学系の分野を分類し、それぞれの分野を学ぶことが出来る代表的な学科名を列挙した。紙幅の関係上、各分野の研究内容の子細を論じることは出来ないため、是非興味のある分野があれば、インターネット等を活用して自ら調査をして欲しい。工学系に興味がある生徒は参考にしていただけると幸いである。

 工学系の分野は上記のように大別することが出来るが、上記の学科名はあくまでも代表的な学科名である。大学によって、呼び方が異なっているだけではなく、学ぶことが出来る分野にも違いがあるのだ。また、先述の通り工学は理学と重複する部分も多々あるがゆえに、志望校を決定する際には各大学で学ぶことが出来る分野を調査する必要があるといえよう。是非、理学・工学に興味がある生徒は自分がどのような分野に興味があるのか、実際に調べてほしい次第である。

(2) 関心が高まる「国際関係学」とは?

 グローバル化にともない、国際関係に関する学部・学科への関心が高まっている。しかしながら、「国際関係」という言葉では具体的にどのような事柄を学ぶことが出来るのか、あまりにも抽象的すぎてイメージがつきにくいだろう。そこで、本稿では国際関係学系について解説を行いたい。

 まず、国際関係学系は「国際関係学」と「国際文化学」の2種類に大別することが出来る。両者の違いは、国際関係学が社会科学系(法学・政治学・経済学・経営学等)の学問であり、国際文化学が人文科学系(文学・歴史学・地理学・文化人類学等)の学問であるという点だ。学問は明確に分野を分類することは難しいため、各分野の内容によっては分野同士で学ぶ内容に重複する場合も多々あるが、概ね上記のように大別される。国際関係学と国際文化学、それぞれの学系で学ぶことが出来る内容の一例を下表にまとめた。

 国際関係学系の分野を学ぶためには、いずれの分野を選択するにせよ英語を基本とした外国語の習得が必須となる。留学や海外研修を義務づけている場合や、TOEICやTOEFLなどの語学試験のスコア取得を単位認定材料としている大学が多く存在する。このほか、授業を英語メインで実施する大学もあるなど、外国語能力を身に付けていることが前提条件となる学問であるといえよう。ゆえに、英語をはじめとする外国語が得意な生徒が志望する傾向が強い学系なのである。

 このように、「国際関係」といっても進む学部・学科によって学ぶ内容は異なることがわかるだろう。また、他の学系と同様に学部・学科名だけでは学ぶことが出来る分野がどのようなものなのか、判断しがたい。志望校を決定するには、繰り返しの提言となるが十分に情報収集をされたい。本稿を通じて国際関係に興味を持つ生徒は、自身がどの分野に最も興味を持っているのか、改めて考えてみるきっかけにしてほしい次第である。

おわりに.

 本稿では「学問探究ガイダンス」という題名のもと、区別がつきにくいと言われている経済・経営・商学および理・工学の違い、また近年関心が高まっている国際関係に関する学系について論じてきた。どの試験にも共通していえるが、目的意識をもって勉強することが重要であり、大学入試においても早期に具体的な志望校(=目標)を定めることによって、より成果の出る受験勉強をすることが出来るようになる。本稿をきっかけに、高校1・2年生が進路選択に対してより一層意識を向けていただければ幸いである。