【8月 大学受験通信1 】
「志望理由書」を考える

はじめに.

 今は8月、夏真っただ中。夏休みの受験勉強の進捗はいかがでしょうか。言うまでもなく、この夏休み期間中にどれだけ勉強できたのかが受験結果を左右するでしょう。「『明日(から)やろう』を40日間言い続けたら、夏休みが終わる」なんて言葉があります。動くなら、動き始めるならば今しかありません。最後までやり抜くことを目指してゆきましょう。

 さて、9月に入ると総合型選抜、さらに11月からは学校推薦型選抜(公募型・指定校型)の出願が始まりますね。これらの入試方式で受験を検討している人も多いのではないかと考えます。概ね総合型・学校推薦型選抜では、書類審査・面接(プレゼンテーション)・実技・小論文などが試験科目として課される場合がほとんどでありますが、特に「書類審査」の中には調査書だけではなく「志望理由書」も含まれるのではないでしょうか。

 一般的に志望理由書は総合型・学校推薦型選抜の出願時に提出する書類として有名でありますが、2021年度入試から始まった大学入試改革によって、一般選抜の出願時においても志望理由書の提出が求められるようになりつつあります。つまり、志望理由書は段階的ではありますが、受験方式を問わず全ての大学受験生が一度は記入する必要がある書類になってゆくことが見込まれます

 そのようななかで、志望理由書に対して「何を書けば良いのか」「どう書けば良いのか」、さらには「何から手を付ければ良いのか」ということすらもわからず、悩み手が止まってしまっている生徒を毎年見かけてしまいます。そこで本稿では、「『志望理由書』を考える」をテーマに、志望理由書を記入するにあたって必要な準備や、具体的に何をどのように書けば良いのかについて解説してゆきたいと考えています。志望理由書という重要な書類を前にして、悩み手が止まってしまっている生徒がいるならば、是非とも一読いただきたい一稿であります。本稿が、志望理由書を書き始めるうえで大きな参考となることになれば、幸いです。

「志望理由書」を考える

(1)志望理由書で必要なことは?

① そもそも志望理由書とは?

 さて、本稿で解説してゆく志望理由書。そもそも、志望理由書を提出する必要性から考えてみましょう。特に、志望理由書が重視される総合型選抜や学校推薦型選抜では、学力試験が課されない場合が多く(学校推薦型選抜では評定が見られる場合が多いですが)、人物であったり高校時代の勉強以外での活動内容や実績であったりと、勉強以外の面を評価して合否が出される場合が多いのです。つまり、受験生は大学に「自分はどのような人間で、どれだけこの大学に行きたいのか」をアピールする必要があるのです。その参考資料となるものが、まさに志望理由書なのです。

 では、志望理由書はどのような点に留意して書かなければならないのでしょうか。それは、一言で言うと受験する大学への「想い(≒愛)」と言えるでしょう。先ほども述べた通り、志望理由書は「自分はどのような人間で、どれだけこの大学に行きたいのか」を大学へアピールするための非常に重要な書類です。ゆえに、志望理由書では「志望する大学の好きなところ(=何が学べるのか)」「自分は大学でどのように学んでゆく希望を持っているのか(=どんな人間なのか)」をしっかり受け取ってもらえるようでなければいけません。もう少し言及すると、大学入試で重視される「主体性・多様性・協働性」のなかの「主体性」を測るための書類なのです。

 志望理由書がなぜ必要なのか、またなぜ重要なのかを理解いただけたでしょうか。それでは、具体的に志望理由書を書くために必要な準備について紹介してゆきます。

② 高校生活を振り返ろう!

 志望理由書を書くことにあたって、まず必要なことが大学に「自分を知ってもらう」ための材料集めとなります。そのため、最初に行うことは「高校3年間を主とした自分の振り返り」です。高校3年間の振り返りといっても、「楽しかった」「がんばった」「大変だった」というような曖昧な感想では意味がありません。自分の高校生活のなかでの勉強や部活動・委員会活動など、力を入れて成果を出した活動のあぶり出しです。もちろん、高校3年間に限定したものでなくても、小・中学生の頃から継続的に行ってきた活動などを含めても構いません。洗いざらい、あぶり出してみてくださいね。

 あぶり出しができたら、今度は「具体的」にその活動について思い出してみてください。その活動を続けていく中で、直面した困難や壁などはなかったでしょうか。そして、その直面した困難や壁を乗り越えた経験はなかったでしょうか。要するに、志望理由書を書くうえで必要なのが「エピソード」なのです。志望理由書は「楽しかった」「がんばった」などといった感想を述べるだけでは、全く意味がありません。エピソードのように、その活動に対してどれだけ主体的に取り組み、その結果どのような成果を手に入れられたのかを書くことができるか否かが、その志望理由書の価値を左右するのです。まずは、具体的に自分が今までに行ってきた活動を具体的に思い出して、書き留めてみましょう。

③ 志望大学・志望学科の知識を深めよう!

 志望理由書で重要な点の1つとして、「志望する大学の好きなところ」をアピールすることであると解説しました。大学側としても受験生が、大学・学部のことを大して知らずに受験してきても「ウチの大学じゃなくても良いよね?」「それって、他の大学じゃダメなの?」といったように捉えられてしまいます。受験生は大学に対して「どうしても、この大学でなければならないのです!」といった強い気持ちを伝えなければ、合格を勝ち取ることはできません。志望理由書を書くときには、「この大学に入学して、こんなことを学びたい、この大学でなければ学べない」ということを具体的にしなければ、評価されることが難しくなります。そのため、志望大学・志望学科の知識を深めることは志望理由書を書くうえでも、非常に重要な作業となるのです。

 志望大学・志望学科の知識を深めるための手段として、最も手軽な手段はインターネットです。基本的に大学はホームページに詳しい大学案内を掲載しています。また、学部ごとのページでは所属する教員の研究分野やゼミナールの授業内容を公開しています。高校生の大多数はスマートフォンを所持しているものと考えますから、今手元にあるスマートフォンを手に取り、検索をかけてみてください。志望する大学の強みは何か、志望する学部・学科ではどのようなことが学べるのか、可能な限り調べてみてください。また、インターネットだけではなく、資料請求などをして志望大学の「大学案内」や「受験要項」なども取り寄せてみることも勧めます。紙媒体ならではの調べやすさもありますからね。

 さらに、可能な限り志望する大学のオープンキャンパスには足を運びたいところです。実際に足を運ぶことによって、志望する大学の雰囲気を感じ取ることができますし、「この大学に通いたい」と強く感じるようになるきっかけにもなります。どの大学を志望するのか悩んでいる受験生にとっては、受験校を絞り込むための大きな判断材料にもなるでしょう。このように、実際に大学に足を運ぶことは志望理由書を書くにあたって、大きな経験と刺激を与えてもらえる機会なのです。ここで、「自分はどうしてもこの大学に進みたいのだ!!」という気持ちを志望理由書で書けるようにしてゆきましょう。 ただし、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、多くの大学がオープンキャンパスを予約制(人数制限を設ける)にしたり、対面型のオープンキャンパスを中止してオンラインでのオープンキャンパスに変更したりと、直接大学へ足を運びにくくなっていることも事実です。感染防止の観点からも判断は難しいですが、オープンキャンパスなどで大学に直接足を運ぶことは、大学を知るための大きなチャンスであることには変わりがありません。

④ 大学卒業後の進路を考えよう!

 志望理由書を書くうえの準備として、最後に大学卒業後の進路を考えることについて、お伝えしてゆきます。志望理由書で重要な点のもう1つに、「自分は大学でどのように学んで行く希望を持っているのか」を挙げました。志望理由書を書くうえで重要な事項として「大学の学びをどのように将来へ活かしてゆくか」という点があります。「おもしろそうだから」「もともと興味があったから」といった抽象的な内容では評価されることは厳しいでしょう。すでにお伝えしましたが、志望理由書に記載する内容は具体的でなければいけません。ゆえに、「この大学(学部・学科)でどのように(どんなことを)学び、学んだことを自分の将来へどのように活かしてゆくのか」をしっかりと書かなければならないのです。

 一番わかりやすいのは、具体的な職業を挙げることです。理系の学部や教育学部など、将来の職業に直結しやすい分野を志望する受験生は、学問の内容と職業が直結する場合が多いため、イメージがつきやすいのではないかと考えます。しかしながら、文系の学部は学問の内容と職業が直接的に結び付くことが少ないため、大学卒業後の進路までなかなかイメージできない場合があるのではないでしょうか。「大学卒業後の進路なんて考えられない」という場合には、志望大学・学部のホームページを見ることを推奨します。どの大学もたいてい「卒業生進路先一覧」を公表していますので、自分が志望している学部ではどのような職業・業種に就職しているのかを確認してみましょう。  要するに、志望理由書を書くにあたって避けたいのは「将来のことは何も決まっていない」ということなのです。ゆえに、理系・文系問わず「このあたりの職業に就きたい」といった現状での「大雑把な見込み」のようなものを考えておく必要があり、そうでないと志望理由書の内容が空虚なものになってしまう可能性が高いのです。

(2)「何」を「どう」書けばいいのか?

〇 志望理由書の構成は?どこを重視?

 ここまで志望理由書を書くために必要となる準備について解説してきました。では、準備も整ったので実際に志望理由書を書いてゆきましょう。実はここまでに準備してきた内容は、全て志望理由書に必要な要素となるのです。志望理由書では、自分を「過去の自分」「今の自分」「大学での自分」「未来の自分」の4つの要素に分類してゆきます。それぞれ、ひとつずつ解説してゆきましょう。

「過去の自分」とは、主に高校3年間を振り返ったうえで学びたいと考えた学問を知るきっかけになったこと、「今の自分」とはきっかけをもとに、今の自分が学びたい学問を深めてゆきたいという考えに至った理由になります。さらに、「大学での自分」とは学びたい学問を志望する大学でどのように学んでゆきたいかという主体性、最後に「未来の自分」は大学で学んだ学問をどのように将来の職業につなげてゆきたいかという希望のことを表します。このように、「過去の自分」から「未来の自分」に至るまでの道筋を一本でつなぎ、この道筋を志望理由書では具体的に、そして「この大学でなければ学べないので、どうしても入学したい」という熱意を伝えられるようにしなければならないのです。

 では、もう少し掘り下げて考えてゆきます。この4要素のなかで重要なのは、「学問への関心」「大学での学び」の2要素になります。なぜならば、志望理由書で最も重視されるのは「受験生の大学への強い想い(≒愛)」だからであり、そして「学問への関心」「大学での学び」はその「想い」の核となる要素であるためです。要するに、志望理由書の核となるのは「私(生徒)はこのような事柄を学んできたため、これを深めるために是非この大学に入学したい」ということ、そして「この大学でなければ、自分の学びたいことは学べないので、どうしても入学したい」という強い志望動機を示すことです。これら2点をより深く、そして具体的に記すことによって「何が何でもこの大学に入学して、学びを深めてゆきたい」という気持ちを大学側(採点者)に伝えなければならないのです。  以上が、志望理由書の構成と重視すべき点となります。それでは、要点を下表へまとめました。確認してみてください。

おわりに.

 本稿では、「『志望理由書』を考える」をテーマに、志望理由書を書き始めるための準備、そしてどのように構成して書けば良いのかについて解説してきました。読んでいただいて理解できたかも知れませんが、志望理由書は実際に書くことはもちろんですが、書くまでの準備が非常に重要なのです。「過去の自分」「今の自分」「大学での自分」「未来の自分」と、4つの要素についてしっかりと準備しなければ、中身の濃い良い内容の志望理由書を書くことはできません。

 そして、準備ができたら出願日までに何度も実際に書いてみて、塾や学校の先生に添削してもらいましょう。良い志望理由書を完成させるには、第三者からの添削を受けて何度も書き直してゆく必要があります。これは、志望理由書のみならず小論文や論述問題など全ての「書く問題」に通ずることです。  本稿によって、良い志望理由書を書くことができるようになるきっかけになれば、何より幸いです。