【4月 教育支援通信】

「正しいしかり方」と「間違ったしかり方」

 子どもを導くために大事なことは「ほめること」とはよく聞きますが、それと双璧をなすほどに大切なのは「しかり方」です。間違ったしかり方がクローズアップされて「ほめる」>「しかる」と印象されていますが、正しいしかり方が出来れば「ほめる」=「しかる」となるほどに教育における有効な手立てなのです。今月の教育支援通信では、「間違ったしかり方」と「正しいしかり方」についてまとめました。

効果のないしかり方

1.勉強を教えるときにしかる

 お母さんが勉強を見てあげているご家庭に多いのですが、「教えているとどうしてもしかってしまうし、こちらもいらいらする」という言葉を面談でよく聞きます。
 最初は子どものペースで教えていきますが、その遅さにいらだったり、自分のスケジュールの都合上お母さんの方があせりだして間違えるたびにどなったり、あげくには放り出してしまう。そしてこれを毎日または2,3日ごとに繰り返して行く。
  これはよくありません。子どもは勉強を教えてもらうことが嫌になってきますし、親子関係にも悪い影響を及ぼします。

2.あらさがし

 今ここでのことをしかるのではなく、以前のことをいろいろ言い出す。うまくできているところもあるのに、うまくできていないところを見つけてゴチャゴチャ言う。
 しかる側にゆとりがなかったり、ストレスがたまっていたりするとついつい言ってしまいます。

3.値下げ・値引き

 よくできたところをほめ、できなかったところを指摘することが上手にできればいいのですが、できないところを強く見てしまうと、できているところまで否定することがあります
 よくあるのはテストで、例えば80点ぐらい取ってきたとします。子どもにしてみれば頑張ったのですが、ついできなかった20点の方に目が行ってしまい、「こんな簡単なところを間違えて」とか「まだ基礎が不十分だから間違うのよ」と、全体のプラス部分までをも否定してしまう言い方をしてしまう。
子どもに完全を望む母親に多い傾向で、子どもが何をやってもほめられないため、自分から考えたり、動いたりする気力をうばっていきます。

4.言い過ぎ

 毎日毎日、「勉強しろ」「勉強しろ」。「子どもが勉強しないのは自分が言い足りないからで、言い続ければいつかはやるようになる」「言えば変わるだろう」という期待からついつい言ってしまう。
これで変わることはほとんどありません。たまにはあるかもしれませんがそれは言ったから変わったのではなく、もともと変わろうとしていたところへ、タイミングよく言っただけです。
 自分の言葉で変えたのではないということを認識しておいて下さい。

5.効果のないしかり言葉

 しかり言葉で「どうして」で始まる言葉、「どうしてこんなことするの?」「どうして困らせるの?」「どうして勉強しないの?」という言葉はほとんど効果がありません。
むしろ、「これはしてはいけないことだ」「これはして欲しくなかった」「本当に勉強して欲しい」など親側の気持ちをストレートにぶつける方がよい結果につながります
 また「もう知らない」とか「勝手にしなさい」という言葉もよくありません。子どもと接していく中で、その絆をスパッと切るような言葉だけは、少なくとも避けて下さい。
 一番マイナスの効果があります。

「しかりそびれ」と「しかりすぎ」

1.しかりそびれ

 子どもも中学生以上になるとだんだん親のいうことを聞かなくなります。特に男の子を持つご家庭からは、「怖くてしかれない」や「しかるタイミングをつい逃してしまう」などと相談を受けることがあります。
 体格も立派になってきて、反抗期真っ盛りな男の子にお母さんではうまくしかれないことと思います。そこから、「しかってまた反発されたらどうしよう」とか、「きれられたらどうしよう」などと不安が進むとなかなか毅然としかるのは難しいと思います。
 しかし、しかれなかったその後で、必ず「このままではいけないなあ」とか「後ろめたさ」「不甲斐なさ」「焦り」などを感じていることと思います。
 そこで出てくるのが「私はあなたを信頼しているからね」「あなたももう子どもじゃないのだから自分でしっかりしなさい」という言葉です。しかし、この言葉に重みを与えるためには親のほうにものすごい覚悟がいります
 大声を出してしかっている方が自分の心配を言葉に出すわけですから楽です。心配しながらも子どもを温かく見守り、自分自身の気持ちをうまく処理しつつ、子どもに対する目配り、心配りは忘れない
 これはとてもエネルギーが必要だということを認識しておいて下さい。

2.「ものわかりのよい親」の行きつく「無理解」

 「私は子どものことをよく理解している」という親ほど子どものことが一番わかっていなかったりします。子どもに対してものわかりのよい親であろうとしすぎたり、友達のような仲の良い関係であろうとしすぎたりすると、しかれない・しからない関係になってしまう。
思春期になると子どもは自分の意見を主張しだします。親の考え方や意見と違うことを考え始めるわけです。だからこそコミュニケーションをとって、話し合いをして、子どもが何を考えているか、親が子どもをどう思っているか、いろいろやりとりをして理解を深めないといけない。
 しかし、しからない・しかれないでコミュニケーション不足のまま来ると、子どものことを理解しているつもりのまま、理解していない状況が起こってくるわけです。
 親子関係で意見が対立するとか議論があるとか、時に親子喧嘩をすることも、とても大事な親子のコミュニケーションです。子どものことを知る絶好のチャンスです。
 ところが良い親を演じすぎると、子どもとの距離がますます離れていってしまい、気づいた時には、「お母さん、あなたのことを理解しているつもりでいたのに」と、後悔したりすることはよくあります。

3.しかりすぎ

 今度は逆にいつもしかってばかりの例をお話します。子どものことを心配するあまりついついしかり続けるお母さんがいます。
 テレビばかり見ている姿にイライラしたり、ことあるごとに「勉強しなさい・早くしなさい・間に合わないでしょ・ちゃんとしなさい・何しているの・何度言ったら分かるの・本当にしょうがない子ね・私だって忙しいのよ・私の身にもなってよ」というような言葉を言い続けているわけです。
 「私が言わないとこの子は動かない。この子を動かすためには、私はずっと言い続けなければならない」と最初からしかり言葉を発します。これは本当は駆り立てる言葉ですが、自分の方もイライラしているのでつい口から出てしまいます。
 ひょっとしたらこれは自分自身が忙しすぎて余裕の無いときに出てくるのかもしれません。まずは本当にしかっている言葉かを確かめるのが大事です。“しかられて育った子どもは何をするにも人目を気にして、自信を持てないでいる傾向があります。”

「しかれない親」に育てられた子どもの行く末

「しかれない」親に「しかられないまま」育てられた子どもはどうなるのでしょうか?
 最近の若い人達は、子どもも含めてですが、しかられることを極端に恐れています。しかられることが少ない中で来た彼らは、しかられると相手から拒否された気持ちになるようです。しかってくれた相手にどう対応していくのか、あるいは、しかられることによって感じた嫌な気持ちを、どう自分で処理していくのかといった力が身についていないのです。

 「子どもたちが一番求めているのは愛情。愛情の次に求めているのはしかられることだ。一番求めていないことは無視されることだ。」という言葉があります。

 つまり、子どもにとっては、無関心でいられることが一番の苦痛なのです。親の無関心の中で育った子どもは「自分に注目して欲しい、関心を向けて欲しい」という気持ちがあるので、その思いを実現するためにマイナスの行動をとるようになる(非行に走る)のです。いや、それならばまだいいかも知れません。

親の無関心が子どもに伝染して、何事にも興味関心を持つことのできない無機質な人間に育つこともあるのです。そのような人間は社会生活に適応できないパターンが多く、いわゆる「引きこもり・ニート」となって社会と自らを断絶することがあります。

いま必要なこと

1.安心してしかれるか?

 子どもをしかる時には、感情に任せてしかるのではなく、安心してしかるだけの親子関係、つまり落ち着いた、ゆったりとした安定した関係がしっかりとあるかどうかがとても大事です。結局、安定した関係の時に「しかる」ということが意味を持ってきます
 学校の先生でも生徒との間に信頼関係をきちんと築いている先生が、生徒をしかった時の効果は絶大なものです。逆にそうじゃない先生の場合はその真の意図は生徒にはまったく通じないでしょう。
暇がない時、忙しい時、余裕がない時などはしからないのが得策です

2.工夫する

 今までしかっても効果が上がらなかったとしたら、何か方法を変えてみるのも一つの手です。「押してだめなら、引いてみろ」ということわざにもあるように、あの手この手で子どもの心に届くように工夫してみるのも大事だと思います。
 試す時間は充分にあります。たった一つ届けばいいだけですから、あせらず、気長にやっていきましょう。

しかり方まとめ

 最近はしかられ慣れてない子どもが多いせいか、または親の方がうまくしかれないのか、子どもがしかられ方をよく知らないように思います。
 それと同時に子ども達の情報量の多さや価値観の多様さも問題だと思います。どちらもすばらしいもので、私達の時代と比べて自由度がはるかに増してはいるのですが、逆にそのせいで子ども達が迷っているように、無気力になっているように思えます。

 「どうせ頑張っても・・・」とか「結局将来は・・・」など先を決めてしまったり、「自分はこの程度だから・・・」とそうそうにあきらめてしまったり。社会全体がこうだからとか、周りがそうだからではなく、自分自身の人生を自分の力で変えていく力を身に付けていって欲しいものです。

「しかる」ということはタイミングが非常に大事です。私たちの方も、褒めるときは手放しに褒めますが、しかる時は、いつにするか、どんな状況でするか、どんな順番で言うか、その後どうフォローするかなどかなり悩みます。むしろ、いつも褒めていたいのですが、現実には「しかる」ことに追われていることもあるのは事実です。

 しかった後の効果ですが、それは「しかる」側がどれだけの覚悟を持ってしかったかでほとんど決まると思います。ほとんどが第1章の効果のないしかり方に当てはまると思いますが、その言葉も親のしかる姿勢によって子どもへの伝わり方が違ってきます。

 昔などはお母さんががみがみ言って、お父さんが重石の一言などとパターンが決まっていました。しかし今は、家庭、学校、地域で協力して子どもの教育に当たらなければなりません

 子どもは子どもで子どもなりの複雑な社会の中で、いろいろ悩んで毎日を送っているようです。ウィルに来る子ども達全員が、生きる力と良識を備えて世の中に出ることを切に願ってやみません。行き届かないところがまだまだありますが、全力で子どもの教育にあたっていきますので、これからもよろしくお願い致します。