【5月 大学受験通信 】
受験への心構え~「結果」にこだわる~

はじめに.

 高校3年生にとっては、「受験生」と呼ばれるようになって久しいものと推察する。既に受験勉強をスタートし、軌道に乗っている受験生も居れば、受験勉強をスタートさせたもののなかなか上手くゆかず苦しんでいる受験生も居れば、部活動の最後の大会に向けたラストスパートで受験勉強に向かい合うことができていない受験生も居るなど、受験勉強の進捗状況に対しては悲喜こもごもではないだろうか。

 季節は初夏、1学期期末考査を控える時期であるが、1学期期末考査が終了すれば短縮授業期間を経て夏期休業へ突入してゆく。この夏期休業期間における過ごしかたこそが、受験勉強の行く先を大きく左右することは火を見るよりも明らかである。筆者自身、高校3年生の進路指導に携わる身として、この夏期休業期間における過ごしかたの重要さについては身に染みるほど感じており、受験生に対しては常に伝えてゆきたいものである。

 そこで、本稿ではこれからさらに本格化する受験勉強に対して、筆者が受験生に向けて身に付けてほしい考え方、習慣化して欲しい行動について論じてゆきたいと考えている。「志望校合格」という目標に対し、どのように考え行動して欲しいかについて紹介したい。手前味噌かも知れないが、一読いただき実行してもらえれば必ずしや最高の「結果」をもたらすことができる内容であると信じている。

「結果」にこだわろう

(1)小さな「結果」が大きな「結果」に

① 大きな「結果」を得るためには

 「『結果』にこだわろう」というテーマを掲げたが、受験勉強における「結果」とは志望する大学へ合格できたか否かという点であるのは論を待たない。そして、志望大学合格という大きな「結果」を成功に導くためには、ただ闇雲に勉強をしていたのでは難しい。受験勉強は、日々の勉強に目標を持ち、その目標を達成することができたのかを確認することが非常に重要である。こうした、日々立てた目標を如何に達成することができたのかといった、小さな「結果」で成功を積み重ねてゆくことが、大きな「結果」で成功をもたらすのである

 受験勉強では「志望大学合格」という大きな目標がありつつも、その道のりが長いことからなかなか目標達成までの過程を定めることができず、初動が遅れがちになるケースが多々散見される。また、過程を定めることができないゆえに、せっかく受験勉強を始めてもモチベーションが続かず頓挫してしまうというケースもある。受験勉強は道のりが長いことより、目標達成のためにどのように行動をしてゆけば良いのか、自己管理が大変難しいのである。では、どのように行動してゆけば、「志望校合格」という大きな目標に向けて努力し、この大きな「結果」を成功に導くことができるのだろうか。

 先述のしたように、大きな「結果」を成功に導くことで大切なことは、小さな「結果」で成功を積み重ねてゆくことに尽きない。本稿ではこの小さな「結果」で成功を積み重ねるという点に焦点を当てて論を進めてゆくことにする。

② 小さな「結果」の積み重ね

 筆者は、「志望校合格」という大きな目標(=到達点)を定めたら、次にこの到達点に至るまでの過程、いわば通過点を決めてゆくことが重要であると考える。あらかじめのお断りだが、本稿では「志望校合格」という到達点を「大目標」、やや中期的に定める目標を「中目標」、短期的に定める目標を「小目標」と表記してゆく。中目標とは、「この参考書・問題集を〇月までに終わらせよう」「〇月までに偏差値△を取る」といった、1ヶ月~数ヶ月単位で掲げる目標である。この中目標は大目標を達成するにあたっての途中経過の確認であったり、受験勉強が予定通り進んでいて成果も出ているのかといった効果測定であったりといった性格を持つ

 そして、本稿で最も伝えたいものこそが小目標である。小目標は、「今週は〇時間勉強する」「今月中にこの問題集終わらせるため、最低でも△ページまで進める」といった、週や1日単位で定めるスモールステップの目標のことを指す。要するに、日々の過ごしかたに目標を立ててゆこうということである。この小目標を掲げるためには、大目標からの「逆算」が重要になる。大目標を決定することで、自分にとって必要な勉強量や参考書、問題集が概ね浮かび上がってくる。ここから「逆算」し、大目標を達成するために「どの時期までに、自分はどのようになっていなければならないか」といった中目標が生まれる。そして、そこからさらに「逆算」して中目標を達成するためには日々どのように過ごしてゆかなければならないかという小目標が生まれてゆくのである。  当たり前のことであるかも知れないが、日々の過ごしかたを考え行動して、小目標の達成を積み重ねてゆくことが中目標の達成につながり、そして志望校合格という大目標の達成につながってゆくのである。そして、小目標の達成こそが先述した小さな「結果」で成功することなのである。では、日々の過ごしかたにおいて、どのような点に留意しなければならないのか、続けて論じてゆきたい。

③ 受験勉強は「PDCAサイクル」を回すこと

 筆者の結論から述べると、日々の過ごしかたで重要なことは「計画を立てること」と「振り返りをすること」である。「PDCAサイクル」という言葉を耳にしたことはあるだろうか。主にビジネス用語として用いられている言葉であるが、「Plan(計画)⇒Do(実行)⇒Check(評価)⇒Action(改善)」を繰り返すことで、日々の業務状況などの改善を継続的に行ってゆこうという考え方である。この「PDCAサイクル」という考え方は勉強にも非常に通ずるものがあり、是非学生のうちから身に付けてほしい考え方であると筆者は考えている。

 要するに、「日々学習計画を立て(Plan)⇒学習を進め(Do)⇒振り返ることで(Check)⇒必要に応じて改善する(Action)」ことが受験勉強において重要な行動であるということである。受験勉強は無計画に、そして闇雲に進めてゆくだけでは、モチベーションを維持してゆくことや最高の成果を出すことは難しい。こうした勉強方法では、受験直前期になってようやく自分の実力と志望する大学のレベルとが乖離していることに気付くなどという最悪の状況に陥る可能性すらあるのだ。

 こうして、「PDCAサイクル」の考え方を習慣化させ日々運用してゆくことで、1日の自分の過ごしかたを振り返り反省し、明日以降の過ごしかたをどのようにしてゆくか修正を加えてゆくことで、受験勉強の進捗を自分にとって最適なものへ変えることができるのだ。

(2)24時間は誰でも平等、でも結果は・・・

① どんな結果にも理由がある

 「PDCAサイクル」を運用し、「振り返る」ことが習慣化されてゆくにあたって、気付いて欲しい事項がある。それは、たとえ小さな「結果」であっても、「結果には良くも悪くも理由がある」ということである。良い結果であっても悪い結果であっても、その結果になったのは必ず何かしらの理由が存在する。振り返りの中でその日の勉強が予定通りに進んだのか、上手くいかなかったのか、いずれにせよその結果になった理由を見つめることによって、明日以降自分がどのように行動してゆかなければならないのかを考えてゆくことが重要なのだ。

② 「結果」にこだわろう

 ここまで「PDCAサイクル」を一つの例として、日々の受験生生活の過ごしかたについて、「計画を立てること」と「振り返りをすること」、そして振り返ることで「理由」を見つめ、その理由をもとに明日以降の過ごしかたを考えてゆくことの重要性について論じてきた。受験生には、とにかく計画・目標を達成することにこだわってほしい。日々の小さな「結果」を如何に良いものにするかを考え、積み重ねてゆくことこそが、最終的に大きな「結果」が素晴らしいものになるということを承知してもらいたい

 「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉がある。言葉の通り、偶然運よく良い結果になることはあっても、悪い結果には必ず理由があって悪い結果になるということだ。たとえ悪い結果になったとしても、その過程で何が間違っていたのか、何が影響してその結果になってしまったかを振り返り、解決策を検討し活かしてほしいと考える。こうした習慣が、日々勉強を進めてゆくにあたって成長を促進してゆくのである。 受験生は日々一日の過ごしかたを考え、24時間をどのように使い過ごしてゆくのかを常に考えてほしいと考える。「24時間は誰でも平等、でも結果は不平等」なのだ。どうか、本稿が最後まで読んでいただいた受験生に大きな良い「結果」がもたらされる、その一助になることを願っている。